誉津別命(読み)ほむつわけのみこと

改訂新版 世界大百科事典 「誉津別命」の意味・わかりやすい解説

誉津別命 (ほむつわけのみこと)

記紀にみえる垂仁天皇皇子。母の狭穂(さほ)姫は兄の反乱に加わって死に,皇子はその燃える城の中で生まれた(狭穂彦・狭穂姫)。天皇は皇子を二俣小舟(ふたまたおぶね)に乗せ池に浮かべて生育したが,皇子は長じても啞であった。ところが飛ぶ白鳥を見て初めて口を動かし,白鳥を手にして言葉の自在を得た。《古事記》では白鳥を手にしても物を言わず出雲大神を拝してようやく言葉の自在を得たという。ここで皇子は肥長(ひなが)姫と婚するが,姫が実は蛇体であることを知って逃走する。聖誕,神秘な養育,籠りの期の啞,白鳥を得ての再生,また肥河の蛇体の神女との結婚というように,皇子の再生までの展開は神秘な始祖伝承おもかげを残している。なぜ子もなく即位もしない皇子の,かかる伝承が伝えられたのか。これに答えるのが《釈日本紀》引用の〈上宮記一云〉の系譜である。ホムツワケはここで6世紀の新皇統の始祖と記述されている。26代の継体天皇が15代応神天皇の血統に結ばれる前に,ホムツワケは継体皇統の始祖として存在し,その始祖伝承の残像がこの物語だったのである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「誉津別命」の解説

誉津別命 ほむつわけのみこと

記・紀にみえる垂仁(すいにん)天皇の皇子。
母の狭穂(さほ)姫は兄の反乱にくわわって死に,皇子はもえる城のなかで誕生。池にうかべた小舟で養育され,大きくなっても口がきけなかったが,白鳥をみてはじめて口をうごかす。「古事記」では結婚した肥長比売(ひながひめ)が蛇と知って逃げるなど,始祖伝承のおもかげをのこす。「古事記」では品牟都和気命,本牟智和気王。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

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