刺激対象を一定時間注視した後に,目を閉じたり他所に目を転じたときに生じる視覚的効果をいう。これには〈正(陽性)の残像positive after image〉と〈負(陰性)の残像negative after image〉がある。〈正の残像〉とは原刺激が強く短いときにおこり,明暗が同じ方向のものである。〈負の残像〉とは明暗が逆転したもので色相は補色になることが多い。また残像は外界の任意の距離にある平面上に投射してみることができる。そのとき見かけ上の大きさは距離に比例して増大する。これを〈エンメルトの法則Emmert's law〉という。また一定方向に運動している対象をしばらく注視してから静止対象をみると,それが逆方向に動いてみえるのを〈運動残像movement after image〉(または〈運動残効〉〈滝の錯視〉)という。残像は刺激除去直後の数秒間持続する普遍的現象であるが,特定の人にのみ数時間,数日後にも現れることがあり,これを〈直観像eidetic image〉という。
執筆者:梅津 耕作
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電灯を注視してから壁を見ると、壁の上に電灯の像が現れる。これを残像という。このように、刺激が除去されたあとも興奮が残り、元の刺激と同質(陽性残像)あるいは異質(陰性残像)の感覚が生じる。この残像の見かけの大きさは、投影面までの距離に比例し、これをエンメルトの法則Emmert's lawという。また、動くものを見たあとで静止したものを見ると、前に見たものと反対の方向に動くように見えるが、この現象を運動残像という。たとえば、滝の流れをしばらく見たあとで視線を周囲の静止面に移すと、その面が滝の流れと反対方向へ移動して見える現象は、運動残像の例である。
残像は、いろいろな明るさ、形、大きさなどの変容の像(かたち)で現れる。複雑な形の元の刺激は単純な形の残像に変容し、投影面に他の図形があると、残像はそのほうへ引き寄せられる。また、刺激の除去後、残像は短時間だけ持続するが、直観像は数日後でも現れることがある。
[今井省吾]
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