朝日日本歴史人物事典 「貞保親王」の解説
貞保親王
生年:貞観12(870)
平安前期の皇族。清和天皇と藤原長良の娘高子の子。南宮,南院式部卿宮,桂親王とも。貞観15(873)年4月,母が女御であったことから親王となり,元慶6(882)年1月同母兄陽成天皇と同日に元服した。琵琶,和琴,尺八などをよくして天下無比の奏者ともいわれ,「管絃の長者,尊者」の異名をとった。古部春近(春近の祖父小部吉延とも)に師事したという笛の音は上霧と呼ばれ,ことに「穴貴」と称する高名な笛の演奏は絶妙であったという。幻の名曲「王昭君」を尺八の譜から横笛に移したり,延喜楽の舞も作っている。その美貌に多くの女性が惹かれ,なかには燃える思いを表すのに袖に蛍をつつんだものもいたという。陽成廃位後,推戴さるべき立場にあったが,陽成に懲りた藤原基経が身内の者を避けたため,即位は実現しなかった。その邸宅(南宮・東一条第とも。現京都御所の南方)は没後藤原忠平に伝領され,花山院として整備された。『新撰横笛譜』『南宮琵琶譜』を選進。
(瀧浪貞子)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報