平安前期の宮廷儀式書。撰者不詳。《本朝法家文書目録》に《弘仁儀式》《貞観儀式》《延喜儀式》各10巻の編目が載っており,これを三代儀式という。しかし,弘仁と延喜の儀式編目には矛盾が多く,両書の伝本もない(ただし,後者には逸文が数条ある)。それに対して貞観の儀式は,単に《儀式》と題する全10巻本があり,18世紀の国学者荷田在満がそれを《貞観儀式》と名づけた。ただし,《三代実録》に撰進の記事がみえず,現行本には序文もない反面,貞観以降の官司名が混入している。とはいえ,その骨子は873-876年(貞観15-18)ころの成立と認めてよい。本書の前半はとくに重要な祭儀と朝儀,後半は年間の宮廷儀式について,各式次第などを詳細に規定している。なかんずく,巻二~四の践祚大嘗祭儀は,《延喜式》とともに後々まで大嘗祭の規範とされてきた。《新訂増補故実叢書》《神道大系》等所収。《続日本古典全集》所収本は荷田在満校本を写真複製し他本との校異を付記。なおその後の儀式書としては村上天皇のころの《新儀式》があり,《群書類従》所収。
執筆者:所 功
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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