租税・雑役や年貢・公事等を出す責務を負っている田地のことをいうが,租税あるいは年貢を納入する責任者(負名)の名前を付し“某負田”と称するのが普通である。この場合,負田は〈名(みよう)〉または〈名田〉とも称される。たとえば,大和国広瀬郡にあった大田犬丸負田の結解(けちげ)状をみると,1046年(永承1)から50年までのものは〈大田犬丸負田〉と記されているが,52年のものは〈大田犬丸名〉,翌53年(天喜1)のものは〈大田犬丸名田〉と記されており,翌54年のものはまた〈大田犬丸負田〉にもどっている。平安時代の公領の場合には負田の用例が多くみられるが,鎌倉時代以降は漸次みられなくなる。とくに荘園内においては,名または名田の用例が一般的であり,負田という言葉が使用されることはあまりなかったと思われる。
→名
執筆者:泉谷 康夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報