日本大百科全書(ニッポニカ) 「責任倫理」の意味・わかりやすい解説
責任倫理
せきにんりんり
Verantwortungsethik ドイツ語
M・ウェーバーによる倫理的態度の理念型で、心情倫理と対をなし、「目的合理的行為」に対応する。心情倫理が結果を顧慮しないで究極の価値目的に献身する心情の一義的純粋さを貴ぶのに対して、責任倫理は、あらかじめある行為がどのような結果をもたらすかを予見し、適切な手段の有効度を考量し、そのうえで行為の結果を他者(神、運命、社会、他人など)に転嫁することなく、これに対して責任を負おうとする。ここでは人間の「よき意志」は前提とされず、むしろ人間が平均的な欠点をもつことが考慮され、そのうえで事態についての冷静な認識と、与えられた諸条件の下での最善の努力が要求される。その意味でウェーバーは責任倫理を、とりわけ政治を天職とする者に不可欠の徳と考えた。しかしそういう認識と努力を尽くしたうえで必然性に従う極限的場合には、二つの倫理は合一することもありうる。
[徳永 恂]
『M・ヴェーバー著、脇圭平訳『職業としての政治』(岩波文庫)』