日本大百科全書(ニッポニカ) 「貸し株」の意味・わかりやすい解説
貸し株
かしかぶ
信用取引、貸借取引において、証券業者が顧客のために証券金融会社から不足分の株式を借り入れて、これを貸し付けること。また、その株式をいう。貸付を受ける側ではこれを借り株とよんでいる。貸し株は、実株をもたないで空(から)売りした売り方が、売り約定の契約を履行するために使われる。株不足になると高率の品貸し料(逆日歩)を徴収される。信用取引制度の健全な発達を促すためには、貸し株の調達が容易にできる必要がある。そのような観点で、2003年(平成15)以降、それまで10単元以上でないと貸し株として預株(よかぶ)できなかったものを1単元からに改め、個人投資家が証券会社に寄託している株券でも容易に貸し株として預株できるようになった。このような改正により、現在、インターネット証券中心に貸し株市場が拡大している。ただし、貸し株によって証券会社等に担保として入金される現金等(貸し株代り金)については、現行の預株制度上、証券会社の管理になっている。そのため、現在禁止されている「運用預りと同様の危険性があるのではないか」という懸念もうかがわれる。この点に関しては、貸し株制度を取り扱っている証券会社がおのおの、貸し株代り金相当額を信託勘定に移すなど、独自にルールをもって安全性に配慮した運用を行っているので、現状は大きな問題になってはいない。
[桶田 篤・前田拓生]
『植月貢著『貸株市場入門』改訂版(2005・東洋経済新報社)』