労働契約に基づく労務提供に不履行が生じた場合に、賃金から労務不提供分の金額を差し引くこと。減給ともいう。使用者による制裁措置の一種であるが、労働基準法は、賃金保護の観点から、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えないこと、総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えないことと規定している。具体的に問題となるのは、労働争議によって労働者が労務提供を集団的に拒否した場合であるが、判断のむずかしい例もあり(たとえば有給休暇戦術とか怠業行為など)、実施にあたっては労使の争点になることも少なくない。賃金カットは、あくまで賃金の一部を差し引くものであり、賃金額そのものを変更する降給とは区別される。
[横山寿一]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…また,怠業等不完全な労働提供型の争議行為の場合は不完全の割合に応じて賃金請求権を生じない。なおストライキ時の賃金額を支給しないことを賃金カットという。争議参加者の賃金請求権は発生しないが,部分ストや一部ストの場合,争議不参加者の賃金請求権の有無が問題になる。…
…1962年最高裁判所)。
[争議行為と賃金]
労働者が争議行為によって労務を提供しない場合,その不就労に対応して賃金カットできる。なぜならば,労働者は労務不提供部分に対応する賃金請求権を失っているからである。…
…使用者は,ストライキ時点の,あるいはこれに近い時点の賃金支払からこの労働不提供の賃金部分を控除して賃金の支払を行う。これを賃金カットとよぶ。
[賃金カットの範囲]
日本の賃金体系は,労働に具体的に対応して計算される賃金部分と,家族手当・住宅手当などのように必ずしも労働に具体的に対応しない賃金部分から構成されている。…
※「賃金カット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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