資本ストック調整原理(読み)しほんすとっくちょうせいげんり(その他表記)capital stock adjustment principle

日本大百科全書(ニッポニカ) 「資本ストック調整原理」の意味・わかりやすい解説

資本ストック調整原理
しほんすとっくちょうせいげんり
capital stock adjustment principle

景気循環理論の一つ。第二次世界大戦後、先進資本主義国において、実質国民総生産に占める実質民間設備投資比率クズネッツ比率)が中期的に約10年の周期循環することを説明しようとした、クズネッツや篠原三代平(しのはらみよへい)(1919―2012)の提唱した理論。すなわち、クズネッツ比率の上昇期(約6年)は、生産量増大のための投資と技術革新に基づく投資とが累積して資本ストックが飽和点に達する期間であり、下降期(約4年)は、その資本ストックが需要に調整して増加率を落とす期間であるとする。

 資本ストック調整原理は次のような特徴をもっている。第一に、この理論は成長循環論である。すなわち、第二次世界大戦後の資本主義経済は、それ以前に比べて高い成長率を持続したので、好況は高い成長率、不況は低い成長率として現れるが、この理論もこの区分に基づいている。第二に、1973年のオイル・ショック後の世界不況は、この理論の不況期よりかなり長くなったが、その後の先進諸国の調整過程は、ふたたびクズネッツ比率の循環を示すようになり、この理論の復位を示している。第三に、従来、主要循環とされていたジュグラーの波(またはジュグラー循環)は、技術革新に基づく設備投資を明確に内包していたとはいえないのに比べて、この理論は優れている。第四に、第二次世界大戦後、とくにアメリカおよび日本の経済当局が認定した景気循環は、ジュグラーの波に比べて周期がかなり短いのに対して、このクズネッツ比率の波はそれを包摂したものとなっている。こうした特徴から、この原理は現代景気循環をもっともうまく説明するものといえよう。

[一杉哲也]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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