ピエゾ電気素子ともいう。水晶、ロッシェル塩、チタン酸バリウムなどの結晶に力を加えると力に比例した電荷が生じ、また電界中に置くと機械的なひずみの生ずる現象(圧電効果)を利用する素子をいう。
圧電素子は、電気機械変換用の圧電変換素子と、共振特性を利用した共振子に用いる。変換素子は機械振動を電気振動に変換するもの(マイクロホン、ピックアップなど)と、電気振動を機械振動に変換するもの(スピーカー、超音波発生器など)がある。なお、後者には安定した周波数の電気振動を発生するとか、ある特定の周波数の電気信号に対して応答するために用いるものがあり、これを共振子という。
圧電現象は1880年にフランスのキュリー兄弟J. Curie, P. Curieが発見したが、この現象を利用してフランスのランジュバンP. Langevinは1917年に水晶超音波発生装置をつくり、アメリカのソーヤーD. Sawyerはロッシェル塩を使ったクリスタルマイクロホンを1931年に発明した。水晶共振子はアメリカのキャデーW. Cadyが1922年に提案したもので、これを用いた安定発振をする水晶発振回路は1932年アメリカのピアースC. W. Pierceの発明である。
圧電効果は、結晶のひずみによってイオンの相対位置が変化するためにおこると考えられ、結晶板の弾性振動と電気振動が一致したとき強い励振(れいしん)がおこる。このため、使用する結晶の切り方、寸法、形状、加える電圧などでいろいろな形の変換素子と共振子がつくられている。
変換素子では、水晶は1メガ~100メガヘルツの超音波発生器に、ロッシェル塩は音響機器に用いられる。チタン酸バリウムなどの圧電セラミックスは電気機械結合係数が大きく、低周波から数メガヘルツの範囲で音響機器、音叉(おんさ)、メカニカルフィルター、超音波遅延素子などに用いられる。これらによって製品化されたものは、圧電ガス点火装置、ソナー、魚群探知機、超音波断層像撮像装置、超音波顕微鏡、超音波溶接機、加速度計、圧電モーター、厚み計、流量計などと多方面にわたっている。共振子には圧電セラミックスが使われることもあるが、振動損失がきわめて少なく、共振周波数が安定な水晶共振子が広く用いられる。結晶の切り方、形状などに応じて、1キロヘルツ~100メガヘルツに及ぶ発振回路とか共振回路の素子とし、送・受信機の周波数制御、水晶フィルター、表面弾性波素子、トランスジューサなどに用いられている。
[岩田倫典]
水晶板などに機械的応力を加えるとその両端に正負の電荷があらわれ,逆に電圧をかけると応力変化を生ずる。この性質を利用した素子を圧電素子と呼び,種々の材料が使用されている。水晶振動子は無線通信の発達とともに周波数安定度が向上し,また近時,時計分野にとり入れられ時計のしくみを一変させるに至った。素子材料は水晶半角ニオブ酸リチウムLiNbO3などの単結晶のほか,セラミックス,ポリフッ化ビニリデンなどの高分子膜の発達が目覚ましい。現在よく使われている圧電セラミックスは,ジルコンチタン酸鉛Pb(Zr,Ti)O3を主体としてこれに金属酸化物などの添加物を配合して焼成した磁器(PZTをはじめ多くの商品名がある)である。これはチタン酸バリウム磁器を改良したもので,大きな圧電性と良好な温度安定性をもち,エネルギー的応用素子,情報処理素子として実用されている。前者に属する基本的なものにガスライターの点火素子がある。圧電セラミックスに機械力を印加して発生する高電圧を火花放電させてガスの点火を行う。振動エネルギー利用としてマイクロホン,スピーカー(ヘッドホンには最近高分子膜も進出),ブザー,圧電リレー,加湿器などがあり,さらに超音波加工,洗浄,溶接,乳化器などへも応用され,これらの中には小さな素子というより大きなマシン(数kWのものもある)の要素となっているものもある。情報用素子には小型化,高周波化の要請を満たしたものとしてピックアップカートリッジやセラミックフィルター,メカニカルフィルター,表面波フィルターなどの各種電気フィルターがある。
→圧電気
執筆者:柴山 乾夫
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