蹴出(読み)けだし

精選版 日本国語大辞典 「蹴出」の意味・読み・例文・類語

け‐だし【蹴出】

〘名〙
① 蹴って出すこと。蹴り出すこと。
② (着物の裾の蹴返(けかえ)しに出す意か) 婦人衣服の一つ。もと染め模様の布に裏をつけて作り、腰から足にかけて、腰巻の上に重ねて、巻きつけて着用するもの。上着の裾が汚れたり破れたりするのをきらい、また、足が現われるのを防ぐための下着。のち明治時代以降は、腰巻そのものを呼ぶ。裾よけ。
浮世草子・好色二代男(1684)六「片膝立て、蹴出(ケだ)しの裾奥(ふか)く、面向不背の姿見るにぞっとして」
屋敷から道路に出るまでの私道
浄瑠璃仮名写安土問答(1780)三「一息(ひといき)ほっとつぐ間もなく、蹴(ケ)出しの内に声高く、別所小三郎則秋を、並川瀬平が仕留たり、打ち取たりと呼はるにぞ」

け‐だ・す【蹴出】

〘他サ四〙
① 蹴り始める。
② 蹴って出す。蹴ることによってかくれていた物をあらわにする。特に、蹴出し②を見せる意にも用いる。
※虎寛本狂言・引括(室町末‐近世初)「あの様なをとこは藪をけても、五人七人は蹴出さうが」
③ 節約して、支払うときに予算が余るようにする。転じて、一般的に、余裕が生じるようにする。ひねりだす。
※歌舞伎・鶴千歳曾我門松(野晒悟助)(1865)中幕「急いで御用に廻って来たから、半時位蹴出(ケダ)して居る、遊んでも構やあしねえ」

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百科事典マイペディア 「蹴出」の意味・わかりやすい解説

蹴出【けだし】

裾(すそ)よけとも。縮緬(ちりめん)などの無地や絞りを用いて単(ひとえ)または袷(あわせ)に仕立て,湯文字(ゆもじ)の表に重ねて腰部に巻き,着物の内に着装する。湯文字があらわに見えるのを避けるためのもの。江戸後期以降は湯文字とともに一般に腰巻と総称される。

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世界大百科事典(旧版)内の蹴出の言及

【腰巻】より

…初めは武家社会の婦人の礼装として用いられた表着(うわぎ)を指したが,江戸時代後期以降主として庶民社会の女性に用いられた湯巻や蹴出(けだし)のことを腰巻というようになった。さらに現代では腰から脚部にかけてまとう布を,腰巻と総称するようになった。…

※「蹴出」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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