日本大百科全書(ニッポニカ) 「軍事型社会」の意味・わかりやすい解説
軍事型社会
ぐんじがたしゃかい
militant type of society
イギリスの社会学者H・スペンサーの用語。彼は、社会を支配的な社会活動の差異に従って軍事型社会と産業型社会industrial type of societyに類別し、前者から後者への進化を説いた。軍事型社会の典型は原始社会にあるとされ、それは自給自足的な社会、外部社会とは不断に攻撃・防衛の関係に置かれた社会であるから、軍事的活動が支配的で、それが政治的統制をも絶対化する。すなわち、対内的規律は「強制的協同」であり、公的組織が全体を支配し、私的組織は排除され、全体の諸権利がすべてであって、成員の私的な諸権利はすべて無である。それは、個々の有機体が主要な神経中枢に支配されているように、個人は社会に服従するものとされ、動物有機体に近い。その対極に、より進化した産業型社会が置かれ、ここでは諸個人の「自発的協同」、私的組織の復権、国家による個人の権利の擁護という「超有機体」の社会となる。
[田原音和]