日本大百科全書(ニッポニカ) 「輪かんじき」の意味・わかりやすい解説
輪かんじき
わかんじき / 輪樏
泥土や氷雪の上の歩行に用いる特殊な履き物を総称してカンジキといい、そのうち、とくに木製輪状のものをワカンジキとよんでいる。現在、カンジキとよばれているものには、次の3種がある。(1)泥土の上の作業で足の埋没を防ぐために用いる木製板状ないし枠状のもの。イタカンジキ、ハコカンジキ、ナンバなどとよばれ、広く深田の作業に使用されるのでタゲタ(田下駄)と総称される。(2)氷の上の歩行で滑るのを防ぐために用いる鉄製爪(そう)状のもの。カネカンジキ、ガンリキ、登山家の間ではカネカン、アイゼンなどとよばれ、登山用具のクランポン、シュタイクアイゼンと同様のものであるが、早く江戸時代から用いられていて、近年の伝来品でないことは、滝沢馬琴の『耽奇漫録(たんきまんろく)』の「陸奥(むつ)三春(みはる)産鉄樏(かんじき)の図」などによっても知られる。(3)雪の上の歩行で足の埋没を防ぐために用いる木製輪状のもの。ワ、ゴス、マゲなどとよばれているが、一般にはその形状からワカンジキ、あるいは略してワカンなどと総称される。欧米でスノーシューというのは、このワカンジキと同類のもの。輪材にはクロモジ、イタヤカエデ、タモ、ハゼ、ヤマグワ、タケ、蔓(つる)木類が使用され、輪の前後をそれぞれ異なった材料でつくるが、これは災難よけのまじないであるともいわれる。なお、スカリとよばれるものは、この大型のもので、先端につけられた手縄(てなわ)を操って歩行し、積雪を踏みつけ、通路をつくるのに用いられた。
[宮本瑞夫]