クロモジ(読み)くろもじ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クロモジ」の意味・わかりやすい解説

クロモジ
くろもじ / 黒文字
[学] Lindera umbellata Thunb.

クスノキ科(APG分類:クスノキ科)の落葉低木。高さは普通5メートルほどになる。樹皮は帯緑色で黒斑(こくはん)があり、黒文字の名がある。葉は柄があり、質は薄く、長楕円(ちょうだえん)形で全縁、長さ4~9センチメートル。雌雄異株。花は4月、葉の展開と同時に開き、枝先の散房花序につき、淡黄緑色。雄花雌花ともに花弁はなく、6枚の花被片(かひへん)がある。果実は液果で9~10月に黒く熟し、球形。本州、四国、九州の山地の林中に生え、中国中部にも分布する。材は古くから爪楊枝(つまようじ)に用いられる。枝葉はかつてクロモジ油採取に利用された。中国では根皮を止血剤などの薬用として用いる。北海道、東北から北陸地方の日本海側には葉がより大きく長さ8~12センチメートルとなる変種オオバクロモジが分布する。クロモジ属は北半球の亜熱帯から温帯に約100種、北アメリカに数種あるほかは、大部分が東・南アジアを中心に分布し、常緑性の種類と落葉性の種類がある。

[門田裕一 2018年8月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クロモジ」の意味・わかりやすい解説

クロモジ(黒文字)
クロモジ
Lindera umbellata

クスノキ科の落葉低木で,日本の暖地や中国に分布する。山野に普通に生える。雌雄異株。樹皮はなめらかで緑色をしているが,ところどころに黒い斑点がみられる。葉は互生し,狭楕円形で質が薄く裏面は白緑色である。春,葉の出る前または新葉と同時に淡黄緑色の小花が多数散形花序をなして咲く。雌花は雄花より大きく数は少い。果実は球形で熟すると黒色になる。樹皮に芳香があるので小枝はつまようじの材料とされ,樹皮の油は香水原料とされる。樹皮に生じる黒い斑点を文字に見立てて黒文字と呼ばれる。

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