改訂新版 世界大百科事典 「辛店遺跡」の意味・わかりやすい解説
辛店遺跡 (しんてんいせき)
Xīn diàn yí zhǐ
中国,甘粛省臨洮県(旧,洮沙県)にある先史時代辛店文化の墓地遺跡。洮河(とうが)にのぞむ馬蘭段丘の上に位置し,1924年J.G.アンダーソンによって調査された。渓谷の北のA地点では100基近くもの墓があったと推定されるが,蘭州でのアンダーソンの土器の購入収集により大々的に掘りかえされ,正式に調査されたのは北枕の伸展葬の墓数基にすぎない。副葬品には土器,石器,骨角器のほかに青銅製品があり,すでに青銅器時代に属している。土器は粗製で,胎土に砂粒を含む双耳の彩陶壺が一般的である。彩陶は白色の下地塗りの上に黒または紅色顔料で雷文,双鉤文,三角文,波状文,太陽文のほかに人物文,犬,鹿などの動物文が描かれる。アンダーソンはこの文化を甘粛六期の編年で馬厰期と寺窪期の間に位置づけたが(甘粛仰韶文化),現在では,時代と地域差を示す張家嘴と姫家川の2類型に分かれ,いずれも斉家文化よりおそく中原の殷・周時代に並行するとされている。
執筆者:横田 禎昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報