進級制度(読み)しんきゅうせいど

日本大百科全書(ニッポニカ) 「進級制度」の意味・わかりやすい解説

進級制度
しんきゅうせいど

児童・生徒が、学年段階的に編成された教育課程順次修了して次の段階へ進んでいくことである。現行制度では、進級は、1か年を単位として、児童・生徒の平素の成績評価(学習指導要領の教育目標や授業への出席日数などを基準とする)に基づいて行われることになっている(学校教育法施行規則57条)。ただし、義務教育段階においては原級留置ないし落第はほとんどなく、また飛び級制(スキッピング・システム)もとられていない。

 欧米諸国の初等中等学校の進級制度は、日本とほぼ同様であるが、ドイツ、フランス、ロシアなどでは成績評価に基づく進級の決定が厳格である。また、アメリカでは、能力別学級編制が広く行われ、個人差(学習速度、興味、関心)に応じた教育を行うため、小学校低学年段階で無学年制(ノン・グレーデッド・システム)をとっている学校もある。要するに、優秀児を遅滞させることなく、また学業不振児を生み出すことのない進級制度が求められているのである。日本でも習熟度別学習が導入され、進度の速い児童・生徒には発展的学習、遅い児童・生徒には補充的学習の機会を提供し、ひとりひとりの児童・生徒の学習を保障しようとしている。

 なお、不登校児童・生徒数の多さ(2010年5月現在、小・中学校で約12万2000人)は、この点でも重大な問題であり、補充指導等弾力的な扱いとともに、学校外の教育機関における学習も認める方向にある。現行制度では、前述のように飛び級制はないが、高等学校在学2年以上で大学に進む飛び入学制が設けられ、また、大学3年から大学院に進むことも認められている。

[津布楽喜代治]

『下村哲夫著『学年・学級の経営』(1982・第一法規出版)』『森部英生編『全訂・教育法規読本』(1999・教育開発研究所)』『高階玲治編『発展的学習の指導の手引き』(2001・教育開発研究所)』『堀内孜編著『学級編制と地方分権・学校の自律性』(2005・多賀出版)』『下村哲夫監修『新版 学校運営便覧』(2007・教育出版)』『窪田眞二・小川友次著『教育法規便覧』平成23年版(2010・学陽書房)』

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