日本大百科全書(ニッポニカ) 「飛び級・飛び入学」の意味・わかりやすい解説
飛び級・飛び入学
とびきゅうとびにゅうがく
小学校、中学校、高等学校の各学校段階内において、学年を飛び越えて進級することが飛び級であるが、現在日本では実施されていない。一部の私立中・高等学校において、成績優秀な生徒は国語・数学・英語等の特定教科に限って1学年上の授業を学習できるシステムを導入しつつあるが、この場合も在籍は学齢学年に置かれており、飛び級制とはいいがたい。飛び級と混同しやすいのが飛び入学であり、これは各学校段階間において、修業年限を終えることなく次の学校段階に進学することである。前者は進級、後者は進学に関することであり両者は異なるが、特別な才能を有する者に対する例外措置という点で同じ考え方にたつ。
第二次世界大戦後の学校制度は、教育機会の平等を促進したが、ひとりひとりの個性・能力に応じた教育が十分にできないとして、例外措置を求める意見が繰り返し主張されてきた。1990年代に入り、個性重視を原則とする教育改革のなかで、教育上の例外措置について改めて検討されたが、
(1)飛び級は受験エリートの育成に使われ、受験競争の激化を招くおそれが強い
(2)飛び級は学校内における児童生徒の心理状況にさまざまな問題を引き起こす
との理由により、1997年(平成9)の第16期中央教育審議会第二次答申では飛び級は行わないとされた。
しかし、飛び入学について上掲答申は、特定の分野(当面は数学と物理)において希有(けう)な才能を有する者については18歳未満でも大学入学資格を認めるという結論に達し、1997年7月学校教育法施行規則が改正され(154条)、高等学校在学2年以上で大学に入学できることが定められた。さらに2001年の学校教育法の改正により、飛び入学できる分野が拡大された。ただし、飛び入学を実施できる大学は、その分野に関する大学院が置かれ、その分野における実績・指導体制を有することが必要である(学校教育法90条2項)。また、大学3年から大学院に進学することも認められている(同法102条2項)。
ひとりひとりの個性・能力を生かすことは、教育の基本原則である。今後、教育内容・方法の多様化に努め、とくに中学・高等学校においては習熟度別学習・選択履修の拡大など創意工夫を図る必要がある。なお、中央教育審議会の教育基本法の改正検討(2002年)において義務教育制度の弾力化が提示されている。
[津布楽喜代治]
『日本教育経営学会編「教育経営と学校の組織・運営」(『講座 日本の教育経営3』所収・1987・ぎょうせい)』▽『天城勲研究代表『高等教育研究紀要第13集――才能教育の現状と課題』(1993・高等教育研究所)』▽『文部省編「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について――中央教育審議会第二次答申」(『文部時報7月臨時増刊号』所収・1997・ぎょうせい)』▽『山本政男編『学校裁量と規制緩和読本』(1997・教育開発研究所)』▽『下村哲夫編『個性重視の教育システム』(1998・教育開発研究所)』▽『小林哲夫著『飛び入学――日本の教育は変われるか』(1999・日本経済新聞社)』