日本大百科全書(ニッポニカ) 「優秀児」の意味・わかりやすい解説
優秀児
ゆうしゅうじ
gifted children
知的能力に優れ、しかもその優秀性が絶えず不変のままであり続ける子供を優秀児とよび、単に学業成績が優れているだけの学業優良児とは区別される。すなわち、120ないし130以上の知能指数(IQ)をもつ子供をさすが、このなかには、知能指数140以上のいわゆる天才児も含まれる。ターマンによると、優秀児は一般に、知能が卓越しているだけでなく、情熱的で、意志が強固であり、感受性が鋭く、想像力も豊かであり、しかも体力は強健であるという資質を備えている。したがって、社会的適応力が強く、将来、社会生活で成功したり、優れた業績を成就(じょうじゅ)したりする可能性も大きいといわれる。
[滝沢武久]
教育方法
しかし、優秀児を普通児と同じ仕方で画一的に教育していたのでは、能力が十分に発揮できず、欲求不満に陥ったり、怠惰な習癖を身につけたり危険も少なくない。そこで従来、優秀児のために特別な教育方法が施されてきた。まず、「促進法」とよばれ、普通児よりも入学時期を早めたり、短期間で進級させたりして、所定の課程を普通児よりも早く終了させる方法があげられる。優秀児の家庭での早教育の方法も、このなかに含めることができる。確かにこの方法をとると、優秀児の素質の発現が促されるし、ターマンが明らかにしたように、飛び級をした子供は、上級学校でよい成績を収めるのも、事実である。
しかし知的発達の性急な量的促進については、今日では疑念がもたれており、むしろ優秀児に対しては、その教育内容を豊かにしてやることのほうが重要だとみなされるようになってきた。すなわち、質的促進をねらう教育方法であって、「拡充法」とよばれている。一般には、特殊学級や特殊学校を編成することによって実施される。優秀児たちは普通児から分離され、これらの学級でより広い経験をしたり、豊富な内容の事柄を学習したりするのである。しかし、この方法をとると、優秀児には優越感を、普通児には劣等感を抱かせるし、さらに優秀児が将来、社会生活の一員となるうえでかえって障害になるなど、この「分離法」には多くの問題点が含まれている。そこで現在では、普通学級のなかで、自由学習や課外活動を活発に行わせたり、個別指導を徹底的に施したりして、優秀児の優れた能力を伸ばしてやることに重点が置かれている。
[滝沢武久]
『森重敏・酒井清編『優秀児』(1963・誠信書房)』