日本大百科全書(ニッポニカ) 「学業不振児」の意味・わかりやすい解説
学業不振児
がくぎょうふしんじ
学業がふるわない状態にある子供をさすが、定義としては2種類に分ける。
(1)相当する学年レベルに比較して明らかに学力が遅れている状態(絶対的学業不振)。
(2)知的能力(知能)から期待される水準に比較し、学力水準が明らかに遅れている状態(相対的学業不振)。アンダーアチーバーunderachieverとはこのタイプの子供をいう。
学力の明らかな遅れについての内容は、両者とも明確ではない。一般的には、絶対的学業不振の場合は、2学年を超える遅れや5段階評定での1の段階をさすことが多い。一方、相対的学業不振の場合は、標準的な知能検査と学力検査の偏差値の差(成就値)などによって規定することが多いが、確定した規準はない。学業不振は、環境要因(情緒的側面、教育環境、学習方法)と発達要因(身体的側面、知的能力発達)、さらにはその複合など、多様な関連性のなかで発生する現象である。不登校などの背景にも、学力の低下や学業の不振が要因として存在することも指摘されている。
知的発達水準が境界域(知能指数70から85程度)にあって、学業が遅れがちなものを学習遅進児slow learnerとよぶこともある。また、明らかな知的障害によるものではないが、何らかの発達的障害が推定され、特異な学習の困難を呈するものについては、学習障害learning disabilitiesという新しい概念でのとらえ方もある。
[上野一彦]
『小口忠彦・森田幸寿・井上弘編『講座学業不振児の指導2 教科と評価』(1970・明治図書出版)』▽『上野一彦・牟田悦子編著『学習障害児の教育――診断と指導のための実践事例集』(1991・日本文化科学社)』