改訂新版 世界大百科事典 「遊仙」の意味・わかりやすい解説
遊仙 (ゆうせん)
yóu xiān
中国で,神仙世界を遊歴することをいう。天上の神界への遊歴はまず辞賦文学のかっこうの題材として取り上げられた。《楚辞》遠遊は,憂悶に閉ざされた詩人の魂が天上世界に飛翔し,神々のもとを歴訪してその苦衷を訴えるという雄大かつ幻想的な作品として,遊仙をテーマとする文学の原型をなす。辞賦が最も盛行した漢代では,司馬相如の〈大人賦〉や張衡の〈思玄賦〉などが代表的作品で,壮麗な辞句を連ねた天上世界の描写を特徴とする。魏・晋に入ると辞賦に代わって五言詩が韻文の主流となり,これに山岳信仰と結んだ神仙思想(神仙説)の新展開や道家思想の流行,山水自然の賞玩といった時代風潮が重なって,遊仙詩という新ジャンルが生まれ,六朝期を通じて盛んであった。その鼻祖は魏の曹植の〈遊仙詩〉とされるが,以後嵆康(けいこう),張華,郭璞(かくはく),陸機らによって,濁世に住むものの神仙世界への憧れを託した幻想的な作品が数多く作られた。
執筆者:麦谷 邦夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報