異類のものが互いに優劣を争う戯作文学の一類型で,飲みものの雄である酒(上戸)と茶(下戸)の論争である。古くは中国晩唐の作と推定される《茶酒論》がある。日本では同名の作品が2編ある。一つは岐阜乙津寺の禅僧蘭叔玄秀(らんしゆくげんしゆう)が1576年(天正4)にした《酒茶論》で,漢文体2000字あまりの作品。第2は作者不明の仮名草子《酒茶論》1巻(17世紀前期成立)である。前者は上戸の忘憂君と下戸の滌煩子が中国の故事を引いて論争し,最後は閑人が登場して〈お酒はお酒,お茶はお茶〉と引きわける。後者は謡曲の世界をふまえて酒茶の合戦譚となっている。同類の文学に《酒飯論》《酒餅論》がある。
執筆者:熊倉 功夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…短編ながら,日本の文芸にも少なからぬ影響を及ぼした。その一つ,《酒茶論》は,妙心寺53世蘭叔玄秀の作。花間に筵を開いて酒を飲む忘憂君(ぼうゆうくん)と,松辺に茶を喫する滌煩子(じようはんし)とが,交互にその徳を述べ論じ合い,勝負なしでめでたく納まるという内容。…
※「酒茶論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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