朝日日本歴史人物事典 「野中婉」の解説
野中婉
生年:万治3(1660)
江戸中期の医者。土佐藩(高知県)首席家老野中兼山の4女として高知に生まれる。寛文4(1664)年3月3日,父の追罰により母兄弟姉妹と共に宿毛に幽閉される。獄中で長兄や3兄より国学,漢学,本草学を学び,のち国学者谷秦山に学ぶ。元禄16(1703)年男系絶滅により赦免される。旧臣をたより高知城下朝倉に住み,秦山に師事しつつ漢方医として生計をたてる。藩主の命じる結婚を拒み,眉を落とさず歯を染めず生涯独身。籠で往診の途中,藩主の若君の籠に出会い,下籠を命じられるも下りず行かせた。藩主の権勢に生涯屈せず生きた。見事な消息文(高知市民図書館蔵)を遺す。60歳で30歳の肌の美を保ったという。
(大原富枝)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報