日本大百科全書(ニッポニカ) 「カナレット」の意味・わかりやすい解説
カナレット
かなれっと
Canaletto
(1697―1768)
18世紀イタリアの画家。本名はジョバンニ・アントニオ・カナルGiovanni Antonio Canal。10月28日ベネチアに生まれ、1768年4月20日同地で没した。父ベルナルド・カナルBernard Canal(1664―1744)は芝居の背景画家であり、その手伝いをした記録が1716年から残っている。1719年ローマ訪問後、1720年ベネチアの画家組合に登録、年代の確かな最初の作品は1722年の『墓碑』連作画である。オランダ人のバンビテッリVanvitelli(本名Gaspar van Wittel。1652/1653―1736)やカルレバリスLuca Carlevaris(1663―1730)などから影響を受け、4枚のベネチア景観図(1725~1726)をルッカのステファノ・コンティStefano Conti(生没年不詳)のために描き、これ以後ベドゥータ(都市の眺望画)の画家として有名になる。『石屋の作業場』(1726~1730年ころ。ロンドン・ナショナル・ギャラリー)などの作品には自由な筆致と光と影の微妙なコントラストがみられる。カメラ・オブスキュラを使い写実的な実景画を多数描いただけでなく、現実には存在しない配置の絵(カプリッチ)も制作している。後のイギリス領事ジョセフ・スミスJoseph Smith(1682―1770)の知遇を得、1746年以後たびたびイギリスを訪れて風景画を描いた。1763年アカデミー会員となる。甥(おい)のベロット(通称は同じカナレット)やグアルディなどに強い影響を与えた。
[篠塚二三男]