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金壽根 きむすぐん

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

金壽根
きむすぐん
(1931―1986)

韓国(大韓民国)の建築家。ソウル生まれ。1951年ソウル大学を中退。その後、来日し、東京芸術大学美術学部建築科で吉村順三に師事、58年(昭和33)卒業。卒業後、東京大学大学院博士課程で都市計画を高山英華(えいか)(1910―99)に学び、60年修了の後、大韓民国国会議事堂コンペで入賞したことを機に帰国し、61年ソウルに金壽根建築研究所を設立する。
 初めはルイス・カーンやポール・ルドルフなどアメリカ現代建築家の影響を色濃く残す、鉄筋コンクリートによる造形的な表現主義的建築作品、例えばウォーカーヒル、バー・ホテル(1961、ソウル)などを手がけるが、後に煉瓦(れんが)積みの壁面によるマッシブな造形を行い、金独特のスタイルを確立した。単一な素材で大きなボリュームの建築をつくり上げるが、内部には小さなアルコーブ(室の壁面につくられる凹所)を設けるなど、韓国の伝統的空間に通じるもので、韓国の若い世代の建築家に影響を与える。空間本社ビル(1977、ソウル)や馬山(ばさん/マサン)聖堂(1979、馬山市)は金のこの時期の代表的な作品である。
 70年代後半には韓国現代建築界の代表的な建築家として、ソウル・オリンピックの一連のスポーツ施設の設計を手がけ、大規模建築、都市開発への金のスタイルの展開が期待されたが、86年に没。
 金は建築家としてだけではなく、空間社における出版などの文化活動を通じて、韓国の文化を担う次世代に多大な影響を与えた。空間本社ビルには設計事務所部門だけではなく、総合デザイン誌『空間』(1966創刊)の出版社、小劇場、カフェなどさまざまな施設が入っていた。このビルはそのまま金の活動領域の広さをを示したものだった。
 韓国国民褒章(1970)、宝冠文化勲章(1976)を受章、また、AIA(アメリカ建築家協会)汎太平洋建築賞受賞(1971)、世界建築家連盟(UIA)理事(1975)を務めるなど、韓国内だけではなく国際的な活動を行った。
 そのほかの主な作品としては、韓国日報社(1962、ソウル)、カナダ・モントリオール万国博覧会EXPO '67韓国館(1967)、日本万国博覧会EXPO '70韓国館(1970)のほか、いずれも所在地はソウルで、国立ソウル大学芸術館(美術学部・音楽学部。1975)、国立ソウル教育大学(1975)、韓国文化芸術振興院公演会館(1977)、大宇(だいう/デウ)アーケード(1977)、国立中央博物館(1977)、野外休憩所(1977)、韓国海外開発公社社屋(1979)、徳成女子大学家政館・薬学館(1979)、韓国文化芸術振興院・美術会館(1979)、京東(きょうとう/キョンドン)教会(1980)、ソウル・オリンピックスタジアム(1984)などがある。[鈴木 明]
『『SD』編集部編『現代の建築家 金壽根』(1979・鹿島出版会)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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