翻訳|brick
普通は粘土を焼き固めた赤煉瓦を煉瓦と呼んでいる。煉瓦は直方体で,手で取り扱いやすい大きさ(たとえば21cm×10cm×6cm)をもち,各種築造材料に使用される。煉瓦と呼ばれるものの種類は,普通煉瓦のほか,耐火煉瓦,耐酸耐熱煉瓦,耐酸煉瓦が日本工業規格に定められている。このほかに軽量煉瓦,舗道煉瓦,釉薬(ゆうやく)煉瓦,鉱滓(こうさい)煉瓦,ケイ(珪)灰煉瓦,セメント煉瓦があり,それぞれ使用目的に応じて建築材料として使われている。煉瓦の主体を占めるのが粘土を焼き固めたものであり,その類似形状で原料などの異なるものが種々の名称で呼ばれている。日本で煉瓦として生産の多いのは耐火煉瓦,次いで赤煉瓦である。
煉瓦の歴史はきわめて古く,土器,ガラス,鉄などの製造とともに中石器時代以降に用いられたものと推定されている。その後,文明の発達にともない,建築,土木用をはじめとして金属精錬用などに広く使用されるようになった。煉瓦は現在世界各地で住宅,事務所,倉庫,工場,道路などの土木建築用として広く用いられているが,それぞれの国で使用様式が異なるので,その形状や品質などの種類が多い。
煉瓦の製造法はまず原料土の粉砕,混練から始まり,成形工程では手打成形で特殊な形状をつくり,多量のものは機械成形する。これを乾燥して焼成するが,小規模工場では登窯もあるが,輪窯,トンネル窯などの量産体制をとる工場が多くなり,品質の安定とコスト低下が図られている。工場は原料産地で運搬の便利な場所が選ばれている。なお,不焼成のまま製品となる鉱滓煉瓦,ケイ灰煉瓦,セメント煉瓦では結合材としてセメントや石灰を用い,成形,乾燥し焼かずに製品となる。耐火煉瓦は製鉄をはじめとした冶金用を主体に,高温を用いる化学工業用,セメントやガラスをつくる窯業用など高温高熱工業用材料として,その種類も非常に多く,多岐多彩にわたって使用されている。その製造法は基本的には普通煉瓦と同様である。
→テラコッタ煉瓦
執筆者:西川 泰男
粘土と土砂とスサ(つなぎ材)をこねて固め,天日で乾燥させた日乾煉瓦は,前5000年ころからメソポタミアで用いられ,以後エジプト,中近東のほか,世界各地で建築材料となっており,地中海周辺や西アジア,中国では現在も主要材料の一つである。古代エジプト,ギリシアでも,神殿建築以外はほとんど日乾煉瓦でつくられていた。
焼成煉瓦は,前3000年ころからメソポタミアで用いられはじめ,バビロンのイシュタル門(前7世紀)では彩色釉と浮彫のついた美しい焼成煉瓦がみられる。焼成煉瓦を普及させたのはローマ人で,前1世紀から急速に一般化された。ローマの標準煉瓦は通例正方形で,1辺が約59cm,44cm,22cm,厚さは7cmから4cmにわたっており,用途により,それらを二つに割った長方形煉瓦,対角線に沿って二つ,あるいは四つに割った三角形煉瓦も用いた。また,円柱などの特殊な形の部分に用いる役物(やくもの)煉瓦もつくられた。ビザンティン建築では,ハギア・ソフィアのような特例を除けば,一般に建物が小規模化したので,煉瓦も小型化し,長さ25cm,幅12.5cm,厚さ6cm前後が標準となり,これが中世の煉瓦の基本となった。
西欧中世では,石造と木造の建築が主要であったが,それでも石材の乏しい北イタリア,オランダ,北ドイツなどでは,13世紀から煉瓦の使用が目だち,寸法はさらに小型化されて,長さ22cm,幅11cm,厚さ5cm前後になった。社会の安定化にともなって,15世紀から煉瓦造が急速に普及しはじめ,チューダー朝のイギリスやハンザ同盟の諸都市ですぐれた煉瓦造建築が建てられ,同時にオランダが煉瓦生産の中心地となって,標準寸法も長さ21cm,幅10cm,厚さ6cm前後に近づいていった。現在,日本の標準煉瓦の基本となっているのは,19世紀以降のアメリカ煉瓦の基準寸法の20cm×10cm×5.5cmである。
日本では,明治維新以来,熱心に煉瓦の製法が研究され,明治後期から大正時代には,きわめて上質の煉瓦(赤煉瓦)が産出されるようになったが,関東大震災(1923)以降の煉瓦造の衰退にともなって質的にも劣悪化し,耐火煉瓦を除いては,内外装用にしか使用できないものとなっている。
→煉瓦造建築
執筆者:桐敷 真次郎
中国では煉瓦を塼(せん)と称し,その歴史は古く,日乾煉瓦は殷代の出土遺物があるほか,西周時代の文献に甓(へき)の名で見える。焼成した塼は戦国時代の宮殿に用いられており,漢代には数多くの塼造アーチ構造の墓が築かれ,その形状も中空の空心塼,床面に敷く文様を施した花塼,壁面を飾る大型の画像塼,枘(ほぞ)をつくり出した子母塼など多彩な類型が現れる。北宋時代の建築技術書には通常の形状のほか,小口を斜面につくる城壁用,アーチ用の楔形などの規格があり,用途も基壇積み,床面敷設,壁,階段,屋外通路の舗装,水路などの多岐にわたっている。明・清時代には,表面を光滑に仕上げるために塼を研磨して接ぎ目地を現さない磨塼対縫(ませんたいほう),建物の外表面を飾る釉(うわぐすり)をかけた琉璃塼(るりせん)や,江南地方では精緻な浮彫・透彫の塼彫,庭園を化粧舗装する舗地(ほじ),屋根の裏板に用いる薄い望塼などの独特な手法が出現した。
→塼
執筆者:田中 淡
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 リフォーム ホームプロリフォーム用語集について 情報
…建築材料として用いられる赤色の煉瓦。日本では幕末に輸入されて使用されはじめ,明治時代に入ると国内でも生産され,安価でかつ赤色の特徴を生かした美しい材料として,構造材,仕上材に多量に使用されてきた。…
…煉瓦を主要材料とした組積式構造を煉瓦構造(または煉瓦造)brick constructionといい,この構造による建築を煉瓦造建築と呼ぶ。 古代エジプトやメソポタミアでは,日乾煉瓦が主要な建築材料で,厚い壁を築き,ポプラやヤナギの幹を梁材とし,その上にむしろを敷き,土を塗って屋根とした。…
※「煉瓦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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