翻訳|arcade
本来は,柱列が連続したアーチを支えるものをいう。これが大々的に開発されたのはローマ時代で,左右のアーチ部分からの水平方向の力を柱上部で釣り合わせる合理的な構造を何段にも積み重ねて,競技場,劇場,橋梁,水道橋の大工事が行われた。以来,構造上のメリットに加えて,アーチの曲線と柱の直線が作り出す快いリズムが人々の好むところとなり,ヨーロッパおよびイスラム建築に広く用いられた。ヨーロッパでは,ロマネスク期に柱間を壁体で埋めたいわゆるブラインド・アーケードblind arcadeも出現し,教会堂のファサード(正面)などで,それを幾段も重ねて装飾的に用いられた。中世およびルネサンス期を通じて,アーケードはとくにその開放性ゆえに副次的な空間(通路など)を区切りとる手段として活用され,教会堂の側廊や前廊,修道院やルネサンスのパラッツォの中庭をめぐる回廊,広場の四周をめぐる柱廊(コロネード)などを飾った。その結果,こうした側廊や回廊,前廊の空間そのものもアーケードと呼ばれるにいたった。とくに中世後期からルネサンスにかけての病院,救貧所の多くは,おそらくは臨時の収容所として,その前面に建物幅いっぱいのアーケードを広げていた。19世紀になり,鉄材と板ガラスの工業生産が開始されると,高いガラス屋根を架けた通り抜けの商店街が出現する。一種の社交場でもあるこの空間は,アーチと無関係ではあるが,広場をめぐる柱廊がかつて同様の役割を果たしていたことから同じくアーケード(イタリアではガレリアgalleria,フランスでパサージュpassage)と呼ばれた。今日,屋根付きの商店街をアーケードと呼ぶのはこれに由来する。これに先鞭をつけたのはロンドンとパリで,早いものは18世紀末から19世紀初頭にかけて出現し,19世紀のヨーロッパ諸都市で競って建設された。
執筆者:横山 正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
建築において、同一のアーチが横に連続してできる形態。またそれがつくる歩廊的な空間をさす。アーケードは古くから知られていたが、その構造的、装飾的な可能性に注目したのはローマ人であり、彼らの建築様式のもっとも重要な特質となるまで発展させた。たとえばコロセウムの外周に3層に重ねられたアーケードは、重厚な角柱列の上にアーチを連続させ、角柱前面に円柱を装飾として付け加えたものである。ローマン・アーケードとよばれるこの形式はローマ建築に繰り返し使われ、のちルネサンス建築に復活された。ローマ帝政後期になると、角柱ではなく、円柱に直接支持されたアーケードが用いられ、それが中世には一般的なものとなった。すなわち修道院の回廊、教会の身廊と側廊を隔てる柱列に、また教会ファサード(正面)の装飾としてリズミカルに展開された。初期ルネサンスもこの形式を好んだ。アーチが変化に富むように、アーケードも多彩であり、壁付きのアーケードや互いに重なり合ったものなどがつくられるようになった。そして、現代では商店街などの屋根に覆われた通路もアーケードというが、アーチとはかならずしも関係なく、むしろかつてのアーケードの歩廊的性格を進展させたものといえよう。
[長尾重武]
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