対外的には法人を代表し、対内的には定款や総会の決議に従って法人の業務を行う法人の機関をいう(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(一般社団・財団法人法)76条・77条)。会社では取締役という(会社法348条・349条)。一般社団法人の例で説明すると、1人または2人以上の理事をおかなければならず(一般社団・財団法人法60条1項)、理事が複数の場合には、各理事が法人を代表し、代表理事がある場合には、代表理事が法人を代表する(同法77条)。理事と法人の関係は、民法の委任の規定に従うものとされ(一般社団・財団法人法64条)、したがって理事は善良な管理者の注意義務をもって法人の事務を処理しなければならない(善管注意義務という。民法644条)。また、法令、定款および社員総会の決議を遵守し、法人のために忠実にその職務を行わなければならず(忠実義務という。一般社団・財団法人法83条)、任務を怠ると、法人に対して損害賠償責任を負う(同法111条)。さらに、理事が自己または第三者のために法人の事業の部類に属する取引を行ったり、法人と取引したりするような場合には、社員総会においてその取引についての重要事項を開示して承認を受けなければならないなど、競業および利益相反行為取引の制限を受ける(同法84条)。
[伊藤高義]
『内田貴著『民法Ⅰ 第4版 総則・物権総論』(2008・東京大学出版会)』
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
外部に対して法人を代表するとともにその内部的な事務を執行する法人の機関(民法52条)。会社では,このような機関につき取締役という語が用いられており,理事は通常,公益法人において用いられている。理事は,数人ある場合もそれぞれが法人を代表する権限を有するのを原則とするが,通常は定款や寄付行為によって代表理事(理事長)1名に代表権を集中している(53,54条。会社にあっては代表取締役)。理事の行為は,すなわち法人の行為であるから,理事が職務を行うにつき他人に損害を加えたときは法人の不法行為として法人が賠償責任を負う(44条)。もちろん,理事は職務権限を誠実に行使する義務を負うから(644条),法人が賠償した場合は損害を与えた理事に対して求償できる。数名の理事あるときは理事会を構成し,法人の事務は通常その過半数によって決せられる(52条2項)。
執筆者:鍛冶 良堅
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…国や地方公共団体も法人であるが,これらは法律上当然に法人とされており,これを当然設立主義とよぶこともある。
[組織,運営]
法人は,その機関である理事(株式会社にあっては取締役)によって外部的行為を行い,また内部の事務の執行を行う。複数の理事の間では,通常1名に代表権を集中することが行われる(理事長,代表取締役など)。…
※「理事」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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