日本大百科全書(ニッポニカ) 「金融サービス仲介業」の意味・わかりやすい解説
金融サービス仲介業
きんゆうさーびすちゅうかいぎょう
株式、預貯金、保険など複数分野の金融商品・サービスの仲介を行うことができる業者。2021年(令和3)、金融サービス提供法(正式名称「金融サービスの提供に関する法律」平成12年法律第101号。旧、金融商品販売法)が施行され、日本で解禁された。それまで銀行、証券、保険などの金融業態ごとに別々に取得する必要があった許可・登録について、金融サービス仲介業者として一度登録すれば、銀行法、金融商品取引法、保険業法などが規定する金融商品・サービスをワンストップで提供できる。情報技術(IT)やデジタル化の進展を踏まえ、政府は金融サービス仲介業者として、フィンテック企業などによるスマートフォンなどを介した一括提供を想定。従来のように銀行や証券会社など特定金融機関に偏らない、多様な商品・サービスの提供が可能となり、消費者の利便性向上や金融機関の効率性向上を促すねらいがある。ただし利用者を保護するため、金融サービス仲介業が扱う商品・サービスを普通・定期預金、住宅ローン、株式、投資信託、公社債、生命保険(保険金上限1000万円)、損害保険(同2000万円)、医療保険(同600万円)などに限定している。元本割れリスクや信用リスクなどがあったり、複雑な説明が必要だったりする、カードローン、非上場株、外貨建て保険、火災保険、仕組み預金などの金融派生商品(デリバティブ)は対象外とした。また、サービス購入代金など顧客財産の受け入れも禁止する。金融サービス仲介業者には、手数料や報酬などの開示義務のほか、顧客への損害賠償資金を確保するため、保証金の供託義務も課す。2021年の金融サービス仲介業の解禁で、SBIネオモバイル証券(東京都港区)と400F(フォーハンドレッドエフ)(東京都中央区)の2社が金融サービス仲介業者に登録した。金融庁は業界の健全な発展や利用者保護にあたる認定金融サービス仲介業協会として、一般社団法人日本金融サービス仲介業協会(東京都中央区)を認定した。
[矢野 武 2022年5月20日]