日本大百科全書(ニッポニカ) 「金融連関比率」の意味・わかりやすい解説
金融連関比率
きんゆうれんかんひりつ
financial interrelations ratio
経済社会における資産には「かね」の側面と「もの」の側面とがあるが、それを金融面と実物面との比重として表したものが金融連関比率である。具体的には金融資産を実物資産で除して得られる値で示される。この場合の実物資産には、企業の設備資産、道路・港湾などの社会資本、個人の住宅などが含まれる。金融連関比率が大きければ、金融構造が高度化されていること、つまり金融の仕組みがさまざまに発展していることを示し、また、金融資産の蓄積が進んでいることを示している。この比率に影響を与えるのは、内部金融・外部金融の程度、直接金融・間接金融の比率、死重債務(総余剰の減少による債務)の大きさなどである。もし企業の資金調達が内部金融で行われるならば、この比率はゼロ(実物資産は増加するが、金融資産の増加はゼロ)であるが、外部金融のうち直接金融で資金調達を行うと、この比率は1(実物資産増と金融資産増は同額)となり、間接金融ならば2(実物資産の1に対し、手形など借り手の借用証書である本源的証券と銀行など間接金融機関が発行する間接証券が1ずつ発行される)となる。
金融連関比率はアメリカの経済学者ゴールドスミスRaymond William Goldsmith(1904―1988)によって考案されたもので、金融の発展度を示している。彼によれば、アメリカではこの比率は一般に上昇傾向にあり、物価変動によって影響を受けるとされており、経済成長と金融構造の変化が密接に関連することが知られている。日本でもこの比率は一貫して上昇しており、およそ2となっている。
[村本 孜]
『原司郎編『テキストブック金融論』(1980・有斐閣)』▽『山田良治著『金融構造分析』(1984・新評論)』