日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉄道手荷物」の意味・わかりやすい解説
鉄道手荷物
てつどうてにもつ
旅客が自ら旅行の際に携行し、列車内に持ち込む物品。「手回り品」または「持込み手荷物」とも称する。JRの各旅客鉄道では、縦・横・高さの合計が250センチメートル、長さ2メートル、重さ30キログラム以内のものを2個まで、そのほか自転車(解体または折り畳みにより、携行袋に収納したもの)、盲導犬、車椅子(いす)を無料手回り品として車内に持ち込むことができる。また小動物(ケースに入れたもの)は有料手回り品となっている。ただし、危険品、暖炉・こんろ、動物、死体、不潔なもの、ほかの乗客に危害を及ぼすおそれのあるものなどは、車内への持込みが不可である。
なお日本国有鉄道(国鉄)時代には、これらとは別に、鉄道事業者が旅客から引渡しを受けて有料で運送する「託送手荷物」(「チッキ」とよばれていた)の制度があった。同制度は、全路線を対象に、定期券以外の旅客が乗車券を呈示して1人1回限り、総重量90キログラムまでの荷物を3個まで、乗車区間に基づいて託送するものであり、駅留(どめ)と、追加料金による配達の取扱いがあった。しかし、1970年代後半以降、自家用車による手荷物の同時携行や、長距離旅客の航空への転移、あるいは宅配便による別送などの増加により、取扱量が激減したため、同制度は1986年(昭和61)11月のダイヤ改正により廃止された。国鉄の分割・民営化後は、JR西日本が1995年(平成7)11月1日から、関西空港連絡特急「はるか」の京都駅発着の乗客に限って「はるかレールゴーサービス」と称して同制度を復活させたものの、2002年(平成14)8月31日の京都シティーエアターミナルの閉鎖に伴い、これも廃止となった。
[齊藤基雄・青木 亮 2022年1月21日]