視覚障害者を目的の場所まで安全に誘導するイヌをいう。この語は、1938年(昭和13)に来日したアメリカ人観光客で視覚障害者のゴードンJ. F. Gordonが伴ったオルティとよぶ「盲人誘導犬」が略称されるようになったものである。盲導犬をより正式に定義すれば、国または地方自治体が認めた公益法人において、5年以上の経験をもつ歩行指導員により十分訓練されたイヌが、使用を希望する視覚障害者とともに法人の定める4週間以上の歩行指導を終了した後、ハーネス(胴輪)をつけ、使用者証を所持した使用者本人と歩行する場合のみ、といえる。したがって、盲導犬としての訓練課程を終了しても、ハーネスをつけていない場合、歩行指導を受けた使用者以外の人が伴ったときは盲導犬と認められない。「歩行」は人間生活の基本的動作のなかでもっとも重要なことで、盲導犬の使用は、視覚障害者の歩行問題を解決する有効な一つの手段である。1916年(大正5)にドイツで、第一次世界大戦により目に障害をもつようになった人のために盲導犬の育成が始められた。日本では1939年(昭和14)ドイツから盲導犬としての訓練を終了した4頭のシェパードが輸入されたが、第二次世界大戦における敗戦とともに忘れられた。その後1957年(昭和32)に国産盲導犬第一号のチャンピイが誕生し、実質的な盲導犬の歴史が始まり、1972年ごろから盲導犬を「アイメイト」とも称するようになった。また、1978年の道路交通法の改正により、視覚障害者の歩行は政令で定める白色または黄色の杖(つえ)を携えるか、または政令で定める盲導犬を連れていなければならないと定められた。また、この改正により公共交通機関への盲導犬の同伴が認められている。2002年(平成14)には身体障害者補助犬法が施行され、国や自治体が管理する公共機関への同伴が認められている(レストラン、ホテルや旅館などの民間施設に関しては2003年施行)。
盲導犬は国家公安委員会の指定した施設で育成されているが、訓練には半年から1年程度を要する。施設は全国に9施設(10か所)ある。犬種はゴールデンレトリバー、ラブラドルレトリバーがほとんどで、2009年時点で国内で働いている盲導犬は1070頭である。
[塩屋賢一]
『盲導犬普及運動推進センター著『日本の盲導犬』(1984・市民出版社)』
盲人の歩行を補助し,盲人を危険から回避させるよう特別に訓練された犬。盲導犬訓練の起源は,ドイツの戦傷盲人援助の目的で1916年,ドイツのオルデンブルクに盲導犬学校が設立されたことによる。23年にはポツダムに盲導犬訓練所が開設され,以来盲導犬訓練による盲人援助がヨーロッパ全土に広がった。日本では,戦前ドイツから輸入した盲導犬を戦傷盲人の人々に渡したことがあるが,この制度は第2次大戦で挫折した。戦後ふたたび盲導犬育成への関心が高まり,67年,財団法人〈日本盲導犬協会〉が組織された。盲導犬の訓練には18ヵ月を要し,犬種にはシェパードとレトリーバー種の雌犬が多い。盲導犬は飼主の盲人の指令を絶対遵守するよう訓練されているが,目的地への進路決定や周囲の状況判断をするのは盲人自身である。盲人は自分の〈眼〉として犬を使いこなし,生活の支えである犬との信頼関係をつくるために,犬のめんどうはすべて自分でみなければならない。
近年,盲導犬の交通機関利用に対する制限はしだいに解消されてきたが,ホテル,劇場,レストラン等の利用については,まだトラブルが多く,社会的理解の普及が望まれている。
執筆者:小島 蓉子
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…(B)愛玩犬 チワワ,チン,ペキニーズ,マルチーズ,ポメラニアン,プードル(イラスト),ダルメシアン(イラスト),ブルドッグ,チャウ・チャウなど。 以上のほか特殊な用途に応じて,警察犬(ジャーマンシェパード,ブラッドハウンドなど),軍用犬(ドーベルマン・ピンシェルなど),救助犬(セント・バーナードなど),闘犬(土佐闘犬など),盲導犬(ラブラドル・レトリーバーなど)と呼ぶこともある。
【習性と行動】
飼われたイヌは飼主に服従し,命令に服するだけでなく進んで外敵を攻撃して飼主を守るが,これは飼主を自分が属する群れの上位者と見ているためである。…
※「盲導犬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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