鉄道小荷物(読み)てつどうこにもつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉄道小荷物」の意味・わかりやすい解説

鉄道小荷物
てつどうこにもつ

かつて日本国有鉄道(国鉄)およびJRが行っていた荷物輸送サービス。鉄道の運送品のうち、その内容が貨物と比べて少量かつ軽量で、しかも迅速な輸送が荷主から要望される場合、貨物列車によらずに旅客列車に連結された荷物車、もしくは旅客列車内の荷物室によって運送扱いとされたサービス、またその扱いの荷物のことである。鉄道小荷物は、荷物車を使用する点で輸送方式は国鉄時代鉄道手荷物のうちの託送手荷物と同じであるが、手荷物のように荷主が乗車券を所持した乗客である必要はなく、運送品が小荷物品としての制限内であれば自由に利用できる制度であった。死体遺骨、危険品、臭気を発するもの、不潔なもの、他の荷物を壊すおそれのあるもの、荷造りが不完全なものは取扱不可であり、在来線の場合、原則として1個の重量が30キログラムまで、縦・横・高さの合計が2メートル以内のものとされていた。料金形態は普通小荷物運賃(発駅持込み、着駅留め)に、必要に応じて配達料や列車指定料等を加えたものとなっていた。

 1970年代には全国の国鉄有人駅の大半に取扱窓口があり、全駅の取扱量のピークは1974年度(昭和49)の約7637万個であった。その後、民間事業者による戸口集配一貫方式の宅配便発達激減一途をたどった。挽回(ばんかい)策として、主要都市相互間を対象に集配込みの「鉄道宅配便Q」が1982年5月に登場し、1985年5月には名称を「ひかり宅配便」にかえて取扱範囲を全国各地に拡大させたが、同年度には総取扱量が約684万個にまで下落した。そこで国鉄では、赤字解消策として、1986年11月のダイヤ改正時に「新幹線レールゴー・サービス」(1981年8月から開始された新幹線による専用の梱包(こんぽう)箱を利用した輸送で集配なし)と「ブルートレイン便」(在来線小荷物のうち、寝台特急の荷物車利用を指定するもので集配なし)を残して、ほかのすべての小荷物輸送を手荷物輸送とともに全面的に廃止した。なお、新幹線レールゴー・サービスに配達(一部地域では集荷もあり)を加えた「ひかり直行便」が、1987年4月の国鉄の分割・民営化と同時に営業を開始した。JRとなった後もこれらのサービスは継続していたが、東海道山陽新幹線の新幹線レールゴー・サービスは2006年(平成18)3月に、ブルートレイン便は2010年12月に廃止された。最後まで残っていた東北新幹線(東京―仙台間)、上越新幹線(東京―新潟間)およびひかり直行便のサービスも2021年(令和3)9月末で終了した。

[齊藤基雄・青木 亮 2022年1月21日]

『運輸省運輸政策局編『運輸経済統計要覧』平成元年版(1989・運輸政策研究機構)』『『時刻表』各月号(交通新聞社、ジェイティービー出版事業局)』

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