改訂新版 世界大百科事典 「鉱工業統計」の意味・わかりやすい解説
鉱工業統計 (こうこうぎょうとうけい)
産業としての鉱工業を対象とする統計であり,鉱工業全般についてのものと個々の業種別のものとがある。また内容的には,いちおう生産活動,需給流通,企業経営,設備状況等のいずれに重点をおいているかで分類することができる。工業全般に関する統計としては,まず〈工業統計〉がある。工業に関する国勢調査ともいうべきもので,毎年12月31日現在で通産省が,製造業の各事業所の過去1年間の生産活動に係る従業者数,原材料使用額,製造品出荷額,有形固定資産額,工業用地・用水等を調査している。〈工業統計〉の歴史は古く1909年(明治42)から始められ,当時は従業員5人以上の事業所を対象としていたが,39年から製造業の全事業所を対象として行われるようになった。81年からは一部の業種を除き原則として4人以上の事業所を対象として調査を行い,全事業所を対象とする全数調査は2~3年に1回行うことになった。調査結果は産業編,地域編,品目編等にわけて発表されている。産業構造,中小企業の分析のほか,国民所得の推計等にも利用されている。なお鉱業に関する同様の統計としては〈本邦鉱業の趨勢〉(通産省,毎年)がある。〈工業統計〉が事業所単位で生産活動をとらえようとするのに対し,鉱工業の主要品目について生産活動を動態的にみるものとして〈生産動態統計〉がある。約3000品目を対象に通産省が毎月の生産,出荷,在庫等の状況を調査し,結果は翌月末に公表される〈生産出荷在庫速報〉および翌々月に公表される鉄鋼,機械,繊維,雑貨,化学,資源等の産業別の統計月報類に掲載される。この統計は業種別の景況判断に有用であり,通産省が毎月発表している鉱工業生産指数はこの統計に基づいて作成されている。
以上は主として生産活動面からとらえた統計であるが,その他の統計としては,経営面からみた〈工業実態基本調査〉(通産省,5年ごとに実施),需給流通面からみた〈機械器具流通統計〉〈繊維流通統計〉(いずれも通産省,毎月),設備面からみた〈工作機械設備等統計〉(通産省,約5年に1度)といった統計がある。
執筆者:門脇 秀一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報