工業統計(読み)コウギョウトウケイ(英語表記)industrial statistics

デジタル大辞泉 「工業統計」の意味・読み・例文・類語

こうぎょう‐とうけい〔コウゲフ‐〕【工業統計】

かつて作成されていた基幹統計の一つ。国内の工業の実態を明らかにするため、経済産業省毎年工業統計調査を行って作成した。令和4年(2022)、経済構造統計統合

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「工業統計」の意味・わかりやすい解説

工業統計
こうぎょうとうけい
industrial statistics

工業の生産活動の実態を把握するため、その生産力、生産実績、経営内容などについて調査した統計総称。それらの諸統計は、工業のもつ生産能力などの基本的内容をいわば静態的に把握するもの、経営内容を中心に把握するもの、生産段階における経済動向を動態的に把握しようとするもの、に大別される。

 日本製造業の基本的生産構造を示すものとしてもっとも重要な統計は、「工業統計表」である。工業統計表は、5年に一度行われる「経済センサス―活動調査」が実施されない年(中間年とよぶ)の6月1日現在(2016年以前は12月31日現在であった)で行われる工業統計調査に基づいて作成される。工業統計といえば、これをさすことも多い。国民経済計算を推計するうえでも重要な統計の一つであり、経済センサス、経済構造実態調査とともに、基幹統計である経済構造統計を構成している。

 工業統計調査の歴史は、明治初年に民部省によって開始された「府県物産表」調査にまでさかのぼるが、独立の調査としては1909年(明治42)から開始された「工場統計調査」がその始まりである。当初は5年ごとの調査であったが、1920年(大正9)以降、毎年調査が行われることになった。その後、調査対象範囲の拡大などが行われ、1947年(昭和22)には統計法に基づく指定統計第10号となった。名称は、そのときの「工業調査」から、1950年に一時「工業センサス」とされたが、翌1951年以降は「工業統計調査」と改められ、今日に至っている。

 調査対象は、日本標準産業分類における大分類では「製造業」に属しており、とくにこの調査は、事業所を基本的調査単位とするところに統計調査上の特徴をもつ。したがって、この統計は、統計調査方法に関して、事業所統計の代表例とされる。この場合、「事業所」とは、「一般的に工場、製作所、製造所あるいは加工所などと呼ばれているような、一区画を占めて主として製造又は加工を行っているもの」をさし、これに該当するものは、見落とされない限り、すべてが調査の対象とされる。

 2020年(令和2)時点では、工業統計調査の対象は従業者4人以上のすべての事業所を対象としている。従業者30人以上の事業所については甲調査票、29人以下については乙調査票によって調査が行われ、それぞれ自計申告方式による調査であり、甲調査票のほうが詳細、多数の内容にわたるものとなっている。

 甲調査票の調査内容は、「事業所の名称及び所在地」「本社又は本店の名称及び所在地」「他事業所(国内)の有無」「経営組織」「資本金額又は出資金額」「従業者数」「現金給与総額」「消費税の税込み記入・税抜き記入の別」「原材料、燃料、電力の使用額、委託生産費、製造等に関連する外注費及び転売した商品の仕入額」「有形固定資産」「製造品在庫額、半製品、仕掛品価額及び原材料、燃料の在庫額」「製造品の出荷額、在庫額等」「主要原材料名」「作業工程」「製造品出荷額等に占める直接輸出額の割合」「工業用地及び工業用水」となっている。この調査をもとに、事業所数、従業者数、現金給与総額、原材料使用額、有形固定資産額、製造品出荷額、付加価値額などについて、産業別、従業者規模別、都道府県別などに分類集計され、また、産業別統計表、品目別統計表、地域別統計表に分けられて経済産業省より公表されている。なお、従業員3人以下の事業所については、調査員が事業所の状況(事業所名、従業者数等)を確認している。

 生産動態に関する統計としては、「経済産業省生産動態統計」が代表的である。基幹統計の一つであり、鉱工業指数を算出するうえでの基礎データになっている。1948年に連合国最高司令部(GHQ)の要請に基づいて、物資の需給調整を図るための基礎資料を得る目的で開始されたものであるが、その後、経済統制の解除に伴い、各種製品の生産動向を的確に把握することを目的として、調査内容の整理、体系化が行われている。2002年(平成14)には、経済構造と統計ニーズの変化を踏まえて、全調査票で大幅な見直しを行った。

[高島 忠・飯塚信夫 2020年12月11日]

『通商産業省大臣官房調査統計部編『生産動態統計10年のあゆみ』(1958・通商産業調査会)』『通商産業省大臣官房調査統計部編『工業統計50年史』全2巻(1961・大蔵省印刷局)』『通産統計協会編『産業経済統計史――工業統計編』(1997・大蔵省印刷局)』

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百科事典マイペディア 「工業統計」の意味・わかりやすい解説

工業統計【こうぎょうとうけい】

産業部門別統計のうちの製造業統計。日本の最も代表的な工業統計には通産省の工業統計表(産業編,品目編,企業統計編,用地・用水編,工業地区編,市町村編)と生産動態統計調査がある。またこの種の統計をもとにした生産指数には産業活動指数および鉱工業生産指数がある。
→関連項目産業統計

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世界大百科事典(旧版)内の工業統計の言及

【鉱工業統計】より

…また内容的には,いちおう生産活動,需給流通,企業経営,設備状況等のいずれに重点をおいているかで分類することができる。工業全般に関する統計としては,まず〈工業統計〉がある。工業に関する国勢調査ともいうべきもので,毎年12月31日現在で通産省が,製造業の各事業所の過去1年間の生産活動に係る従業者数,原材料使用額,製造品出荷額,有形固定資産額,工業用地・用水等を調査している。…

※「工業統計」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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