改訂新版 世界大百科事典 「鋳鍛工業」の意味・わかりやすい解説
鋳鍛工業 (ちゅうたんこうぎょう)
鋼を溶かして鋳型に注いで製品を作ったり(鋳造),さらに鋳造された鋼塊にプレスやハンマーで圧力を加えて製品を作る(鍛造)事業をいう。工業であるから機械を用いた近代的な製造方法によるものを指すが,工業化以前の時代には人手によって鋳型やハンマーを使い,刀等の武器や道具が作られた。鋳造は鋳型で注文どおりの寸法の製品を作るものだから,複雑な形状の製品に適しているが,量産には向かない。鋳鋼は主として機械用の素形材として使われる。鋼にニッケル,クロム,モリブデンなどを添加した合金鋼鋳鋼品は強靱性,耐食性,腐食性等に優れているから,原子力関連の機器の部品や構造物に使われる。鍛鋼品は一段と強靱性に優れ,機械用の高温・高圧部の基礎素材となる。主要な需要先は鋳鋼が土木建設機械,船舶,バルブ,コック,鍛鋼が自動車,船舶,ロール,土建,鉱山機械である。
日本の鋳鋼メーカーは約130社と数が多く,中堅企業の専業メーカーと機械や鉄鋼等のメーカーの兼業(小松製作所,神戸製鋼所など)とからなり,生産シェアは兼業メーカーのほうが高い。鍛鋼メーカーは約25社と比較的少なく,また専業はなく鉄鋼との兼業が生産シェアの大部分を占めている(住友金属工業,大同特殊鋼などが大手)。
執筆者:下田 雅昭
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報