…耕刃が柄に鋭角状にとりつけられた人力農具で,柄を手でにぎり,耕刃を地面に強くあるいは軽くうちつけて使用する。すき(犂),掘棒とならぶ代表的な耕具で,くわを主要耕具とするくわ農耕地帯は熱帯にあり,バナナやタロイモの分布範囲とほぼ対応しているが,そのうちメラネシア,ポリネシアでは掘棒と,また南~東南アジアではすきと併存している。温帯のすき農耕地帯でも補助農具として広く使用されている。大航海時代以前の南北アメリカではすきがなく,くわ農耕が温帯まで広がり,熱帯では掘棒と併存していた。…
…年間最初の労働がその年の生業全体に影響を及ぼすという考えに基づき,多分に予祝の意味をこめて行われる。田畑の仕事始めは鍬入れ,作始め,打ちぞめなどといわれ,正月2,4,11日などの早朝にその年の恵方(えほう)に当たる田畑へ出て数鍬うない,持って行った正月飾りや神酒,洗米などを供えてくるが,その際洗米やオソナエ(餅)の砕片を並べて烏呼びをし,どの洗米や砕片を食うかによって作占(さくうら)をする風もある。堆肥を田畑に散らしたりする所もある。…
…しかし,4日朝の僧侶による寺年始までには門松をとってしまうべきだとする所でも,屋内の神棚の松飾や注連(しめ)飾をはずすのはそれより後だとする所が少なくないし,また3日など比較的早い時期に門松をとる所では,その穴の跡に門松の芯の小枝をとって少し挿しておく所が珍しくないことから,3日などではなく,7日もしくはそれよりも長い期間が本来の松の内ではなかったかと思われる。取りはずした松の処理は,小正月のトンド(左義長)の火で燃やす所が多いが,正月11日などの鍬入れ儀礼(仕事始め)のときに田畑へ持っていって立てる例もある。【田中 宣一】。…
※「鍬入れ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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