政府が国政の各分野の現状と課題をひとまとめにして報告書の形で広く国民に提示する公文書。この言葉の由来はイギリス政府が外交の内容を国民に知らせるために出した文書の表紙が白かったところから白書white paperと呼ばれるようになった。以来,政府(行政府)の公式報告書を一般に白書という。これにたいしてイギリスの議会の報告書は青表紙がついているため青書blue bookと呼ぶのがならわしである。
日本では片山哲内閣が1947年7月経済白書(都留重人執筆の《経済実相報告書》)を出したのが始まりで,〈財政も企業も家計も赤字〉と当時の経済の危機的〈実相〉を伝えた。以来,各省庁ごとに,たとえば労働白書,通商白書,厚生白書,国民生活白書,防衛白書等毎年数多く出されるようになっている。白書は主管省庁で調製され,閣議の了承をえて公表され,国民が入手できるように市販されている。
白書には,一般に,各行政分野の現況と行政事業・施策の達成ぐあいや成果が各種の統計数値や指標類によって記述・分析されているとともに,今後の主たる課題が提示されている。一面では各省庁のPRの性格をもってはいるが,広く政府の保有する情報を公表することによって国民の理解や便宜に役立てようとするのが目的とされている。
こうした政府発表の白書にたいして,労働組合,企業団体,研究機関,運動グループ等の民間団体が,独自の観点と調査に基づいて政府が書かなかった,あるいは十分にはとらえていないと考えられる行政活動の実態や不備,国民生活の問題状況をとりまとめて広く国民に訴える場合もある。〈……黒書〉と呼ばれるものはその例である。また最近では地方自治体でも行財政の運営実態と課題を報告書にまとめて公表するところが出てきており,広く情報提供活動が活発化している。住民と役所が共同で作成する〈まちづくり白書〉なども登場している。
執筆者:大森 彌
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政府各省庁が所管の行政活動の現状、問題、対策そして将来の展望などを国民に知らせるために発行する刊行物。イギリス政府が外交に関する報告書を白表紙white paperで刊行したのがきっかけで白書の名がつけられた。日本では1947年(昭和22)7月『経済白書』(現『経済財政白書』)が片山哲(てつ)内閣の手で発表されたのが最初である。以後『厚生白書』『労働白書』『建設白書』『環境白書』など、主要省庁が年次報告書の形で30種を超える白書を発行するようになった。なお、外務省編の『わが外交の近況』は『外交青書』blue bookとよばれている。また、最近では、地方公共団体においても、住民に身近な行政の課題を『市民生活白書』『公害白書』などの名で発行する例がみられる。
[中村紀一]
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