日本大百科全書(ニッポニカ) 「防曇ガラス」の意味・わかりやすい解説
防曇ガラス
ぼうどんがらす
antifogging coated glass
ガラス表面に、水蒸気による曇りが発生しにくいガラス。ガラス表面に熱線あるいは透明導電膜をプリントして、そこに電流を流しガラス表面を加熱することで防曇性を付与したものが一般的に採用されている。おもに自動車用の後部ガラス、洗面化粧台や浴室の鏡などに採用されているが、電源が必要なため適用場所が限られる。保水性を高めることで防曇性を付与するガラスの開発も試みられている。保水性を有する材料をガラス表面に塗布して、水蒸気が結露する前にガラス面から内部に吸収させる原理で効果の継続性はあるが、吸水能力以上の水分を吸水することはできない。ガラス表面に親水処理を施して、結露した水分を膜状に広げることで流し落とす方法も検討されているが、効果に持続性がない。そこで、親水性と保水性の双方を付与するタイプのガラスの開発がなされている。使用初期は水分を吸水し吸水能が飽和すると親水性によりガラス表面に均一な厚みの水膜が形成され防曇性が維持される。超撥水(はっすい)ガラスは、撥水材料をガラス表面にコーティングし、かつ微細な凹凸をつけることで超撥水効果を施したものであるが、結露水のような微細な水滴を落とすためには十分な効果を付与するのがむずかしい。
[伊藤節郎]