日本大百科全書(ニッポニカ) 「防錆塗料」の意味・わかりやすい解説
防錆塗料
ぼうせいとりょう
rust inhibiting paint
腐食を防ぐ目的で、物体の表面に塗布される塗料。普通、さび止め塗料anticorrosion paintといい、油性系とアルキド樹脂系のものが多い。さび止め顔料として、鉛丹(四酸化三鉛Pb3O4)、塩基性クロム酸鉛、シアナミド鉛、亜酸化鉛、クロム酸亜鉛、亜鉛末などが配合される。最近では労働衛生上の立場から、モリブデン酸カルシウムやリン酸アルミニウムなども用いられる。油性系のものは塗装が容易で厚塗りができるが、乾燥性がやや遅い。橋梁(きょうりょう)、オイルタンク外面、建築鉄骨、各種プラント類などの下塗り用に用いられる。アルキド樹脂系のものは油変性のフタル酸とグリセリンとからの樹脂が多い。油性系のものに比べて乾燥性がよく、耐水性や耐候性が改善されているが、素地に対する塗りやすさがやや劣っている。油性系のものとほぼ同様に用いられる。また、ウォシュプライマーとよばれるものがあり、化成品処理でさび止めとする。ポリビニルブチラール樹脂、クロム酸亜鉛、リン酸などを調合したもので、リン酸のエッチング作用により、金属表面に強く付着した塗膜を形づくる。下地塗料として優れた性質をもっているが、塗膜の厚みが薄いために長期の暴露耐久性はない。そのほかに、無機質亜鉛末をアルカリシリケートの水溶液ないしエタノール(エチルアルコール)溶液に混合した無機系のさび止め塗料もある。
[垣内 弘]