日本大百科全書(ニッポニカ) 「フタル酸」の意味・わかりやすい解説
フタル酸
ふたるさん
phthalic acid
芳香族ジカルボン酸の一つ。o(オルト)-ベンゼンジカルボン酸ともいう。古くはナフタレンの誘導体と考えられ、ナフタリン酸とよばれたこともある。
ナフタレンを硝酸または過マンガン酸塩で酸化すると得られる。工業的にはナフタレンまたはo-キシレンを酸化バナジウム系触媒により空気酸化して、無水フタル酸を合成している。融点近くの温度に加熱すると分解して無水フタル酸になるので、融点は加熱の速さにより異なる。無色の結晶。水、エーテルには溶けにくいがエタノール(エチルアルコール)には溶ける。フタル酸自体の用途は少ないが、誘導体である無水フタル酸は合成樹脂の原料、フタル酸ジオクチルは合成樹脂の可塑剤、フタル酸ジエチルは香料の溶剤など広い用途をもつ。
[廣田 穰・末沢裕子 2015年7月21日]