フタル酸(読み)ふたるさん(英語表記)phthalic acid

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フタル酸」の意味・わかりやすい解説

フタル酸
ふたるさん
phthalic acid

芳香族ジカルボン酸の一つ。o(オルト)-ベンゼンジカルボン酸ともいう。古くはナフタレンの誘導体と考えられ、ナフタリン酸とよばれたこともある。

 ナフタレンを硝酸または過マンガン酸塩で酸化すると得られる。工業的にはナフタレンまたはo-キシレンを酸化バナジウム系触媒により空気酸化して、無水フタル酸を合成している。融点近くの温度加熱すると分解して無水フタル酸になるので、融点は加熱の速さにより異なる。無色結晶。水、エーテルには溶けにくいがエタノールエチルアルコール)には溶ける。フタル酸自体の用途は少ないが、誘導体である無水フタル酸は合成樹脂の原料フタル酸ジオクチルは合成樹脂の可塑剤、フタル酸ジエチルは香料溶剤など広い用途をもつ。

[廣田 穰・末沢裕子 2015年7月21日]


フタル酸(データノート)
ふたるさんでーたのーと

フタル酸

 分子式  C8H6O4
 分子量  166.1
 融点   234℃(封管中)
 沸点   (分解)
 比重   1.59
 溶解度  0.71g/100g(測定温度25℃)
 解離定数 K1=1.12×10-3
      K2=3.89×10-6

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フタル酸」の意味・わかりやすい解説

フタル酸
フタルさん
phthalic acid

1,2-ベンゼンジカルボン酸のこと。化学式 C6H4(COOH)2 。ナフタリンまたは o -キシレンを酸化分解するとき生成する。無色単斜晶系柱状晶。封管中で急速に加熱すれば約 230℃で融解する。大気中で加熱すると融点以下の温度で脱水し,無水フタル酸となる。水,エーテルに微溶,エチルアルコールにやや溶ける。塩酸酸性の水溶液からジルコニウムイオンを定量的に沈殿するので,その定量分析用試薬となる。無水フタル酸,安息香酸,合成インジゴの原料である。イソフタル酸テレフタル酸はフタル酸の異性体である。

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