除蝗録(読み)じょこうろく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「除蝗録」の意味・わかりやすい解説

除蝗録
じょこうろく

農業技術書。著者大蔵永常(おおくらながつね)。1826年(文政9)刊。油を田に注いでイネの害虫ウンカを駆除する方法について詳述した本。油を田に注ぎ、田の表面にできた油膜にウンカ類を払い落とし、油で飛び立てなくし、また窒息させる方法は、かなり古くからあった。中国から伝来したともいうが、1600年代後半から筑前(ちくぜん)国(福岡県)で使用例がみられ、それを大蔵永常が紹介し、各地に広まった。彼は、当初菜種(なたね)油を勧めていたが、『老農茶話』(1804)では鯨油がよいとしており、『豊稼録』(1826)、『除蝗録』では全面的に鯨油を推している。

[福島要一]

『山田龍雄他編『日本農書全集15 除蝗録・農具便利論』(1977・農山漁村文化協会)』

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改訂新版 世界大百科事典 「除蝗録」の意味・わかりやすい解説

除蝗録 (じょこうろく)

大蔵永常が1826年(文政9)に刊行した農書。日本の凶作の原因が害虫とくにウンカの発生にあるとして,その駆除法を考察し,鯨油をまくことによる効用と使用法を説いた。さらに44年(弘化1)に《除蝗録後編》を刊行し,鯨油を入手できない地方のためにカラシ油・桐油・魚油などの製法と使用法を記述した。両書は害虫防除農薬に関する記述としては日本最初のものである。《日本農書全集》所収
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世界大百科事典(旧版)内の除蝗録の言及

【鯨油】より

…最初はおもに灯用に供されたが,1732年(享保17)の大飢饉後,稲の害虫駆除に利用されはじめ,文化・文政ころには九州,四国,中国地方にまで広く除蝗(じよこう)のために使われるようになった。幕末の農学者大蔵永常の著《除蝗録》(1826)には,一般に油での害虫駆除は元禄・享保ころまでは知られていなかったが,筑前国で菅公の廟の灯明の油に虫が飛びこんで死ぬのを見て思いつき,水田に鯨油を注いでその上へ虫を落として駆除したとある。明治前期にも鯨油は依然としておもに除蝗用に使われたが,その後,石油その他の化学薬品が使用されるに及んで漸次減少した。…

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