改訂新版 世界大百科事典 「集積の利益不利益」の意味・わかりやすい解説
集積の利益・不利益 (しゅうせきのりえきふりえき)
産業や人口などの経済活動や人間活動が一地域に集中して立地することから,集積agglomerationの利益とよばれる種々の利益(あるいは節約)が生ずる。都市の成長はこの利益によるところが大きいが,この利益をもたらす要因の一つは,資本が特定地域に集中して投資されることから生ずる〈規模の経済〉であり,そうした資本の典型は社会資本ないしインフラストラクチャーである。もう一つは外部経済効果(外部経済・外部不経済)によるものであり,次の二つがそのおもなものである。(1)同一業種が集中することから生ずる〈地域特化の経済〉,(2)異なる業種が集中することから生ずる〈都市化の経済〉。他方,集中は種々の外部不経済効果をもたらし,過密の弊害すなわち集積の不利益が生ずる。その一つは交通混雑などの混雑現象であり,もう一つは,大気汚染,水質汚濁,騒音・振動などの公害(汚染)現象である。また社会資本の不足に伴う不利益も発生しやすく,とくに貧困層がこれらの不利益をこうむることが多い。
→都市問題
執筆者:山田 浩之
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