集積の利益不利益(読み)しゅうせきのりえきふりえき

改訂新版 世界大百科事典 「集積の利益不利益」の意味・わかりやすい解説

集積の利益・不利益 (しゅうせきのりえきふりえき)

産業や人口などの経済活動や人間活動が一地域に集中して立地することから,集積agglomerationの利益とよばれる種々の利益(あるいは節約)が生ずる。都市の成長はこの利益によるところが大きいが,この利益をもたらす要因の一つは,資本が特定地域に集中して投資されることから生ずる〈規模の経済〉であり,そうした資本の典型社会資本ないしインフラストラクチャーである。もう一つは外部経済効果(外部経済・外部不経済)によるものであり,次の二つがそのおもなものである。(1)同一業種が集中することから生ずる〈地域特化の経済〉,(2)異なる業種が集中することから生ずる〈都市化の経済〉。他方,集中は種々の外部不経済効果をもたらし,過密の弊害すなわち集積の不利益が生ずる。その一つは交通混雑などの混雑現象であり,もう一つは,大気汚染水質汚濁騒音振動などの公害汚染現象である。また社会資本の不足に伴う不利益も発生しやすく,とくに貧困層がこれらの不利益をこうむることが多い。
都市問題
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の集積の利益不利益の言及

【コンビナート】より

…コンビナートは,良くも悪くも,高度成長期を象徴する生産様式であった。【中岡 哲郎】
[コンビナートの不利益]
 コンビナートは集積の利益を求めて形成された巨大な生産単位であるが,同時に生産の不利益をも集積したものとして存在する(集積の利益・不利益)。とくに1960年前後から日本の各地に形成されたコンビナートは,石油・電力・化学・鉄鋼といった素材生産型の重化学工業をワンセットとして新規立地したものであり,その規模は世界的にも最大級のものであったため,集積された不利益もまた巨大なものとなっている。…

【都市経済】より

…これは規模の経済(大規模生産の利益)と集積の経済に分けることができ,また後者はさらに地域特化の経済と都市化の経済に分けられるが,このうち都市化の経済は多種多様な産業や企業や人間が一つの地域に集中することから生ずる外部経済効果にほかならない。しかし,集積が過度に進むと,過密問題や公害問題,地価騰貴や住宅不足の問題など,さまざまの都市問題が発生する(〈集積の利益・不利益〉の項参照)。これらの都市問題を解決し,都市の経済活動を円滑に機能させるためには,都市政府は都市財政を通じて,種々の公共サービスを提供するとともに,都市計画を実施しなければならない。…

※「集積の利益不利益」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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