化学辞典 第2版 「離液系列」の解説
離液系列
リエキケイレツ
lyotropic series
無機塩類水溶液の表面張力は,純水の表面張力より大きくなる傾向がある.これは表面濃度が溶液内部より小さい(これを負吸着という)ことによる.その程度は,塩類のイオンの種類によって順位のあることが知られている.これを離液系列(順列)という.たとえば,アルカリ金属塩では同一陽イオンに対して,陰イオンの間に
Cl > Br > NO3,
同じ陰イオンに対して陽イオンの間に
Li > Na > K
の順位が認められている.これは溶液の疎水的性質,たとえば界面吸着性やコロイドの凝集作用についても同様の順位で現れる.たとえば,血炭,活性炭などに対する吸着性は,塩化物,臭化物,ヨウ化物,および硝酸塩の吸着について,同じ陰イオンに対しては,
H+ > Ba2+ > Sr2+ > Ca2+ > Mg2+ > Rb+ > K+ > Na+ > Li+
である.陰イオンの順位はいっそう再現性がよく,同じ陽イオンに対して
OH- > CNS- > I- > Cl- > (1/2)SO42-
の順位になる.親水コロイドは希薄な電解質に対しては安定であるが,濃厚な電解質によって凝集沈殿を起こす.これはイオンによる脱水作用によるもので塩析という.このとき,電解質のイオン価には関係がなく,また親水コロイドの荷電の正負にかかわらず,陰イオンの影響が大きい.F. Hofmeister(1887年)は,タンパク質水溶液について塩析効果を比較して次の順位を得た.
CNS > ヨウ化物 > 臭化物 > 硝酸塩 > 塩化物 > 酒石酸塩 > クエン酸塩 > 硫酸塩.
これをホフマイスター系列(Hofmeister's series)という.上記の離液系列とともにイオンの水和性にもとづく現象で,親水コロイドの水和を抑制する作用(脱水作用)を示すものと考えられる.乾いた親水性高分子(ゼラチンなど)が水で膨潤するとき,電解質は離液系列に従って抑制作用を示す.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報