活性炭(読み)カッセイタン(その他表記)active carbon

デジタル大辞泉 「活性炭」の意味・読み・例文・類語

かっせい‐たん〔クワツセイ‐〕【活性炭】

吸着能力を強めた炭素物質。木炭ヤシ殻などを焼成炭化し、細孔をもつ構造を発達させて多孔質としたもの。臭気色素などをよく吸着する。脱臭脱色精製浄水などに用いる。

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精選版 日本国語大辞典 「活性炭」の意味・読み・例文・類語

かっせい‐たんクヮッセイ‥【活性炭】

  1. 〘 名詞 〙 気体や液体に含まれている物質を吸着する能力の大きい炭。無定形炭素主成分とする黒色の微粉末または粒状物。脱色、脱臭、脱味、溶剤回収、空気浄化、浄水などに用いられる。
    1. [初出の実例]「活性炭とクロロホルムをたくさん使って」(出典:追われる女(1953‐54)〈平林たい子〉ジョセフィン号)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「活性炭」の意味・わかりやすい解説

活性炭
かっせいたん
active carbon

色素やガスなどに対して強い吸着能を有する黒色をした炭素質物質。無定形ないしは微結晶状の炭素からできており、直径が50ナノメートル以下の細孔の発達していることが特徴である。細孔の占める容積は1グラム当り0.6~0.8立方センチメートルにも及ぶ。多数の細孔が形成する内部表面積は、すべての多孔体物質中でももっとも大きい。1グラム当り500~1500平方メートルに達するものもある。活性炭が色素やガスを吸着する能力は、このような多数の細孔が存在し、かつその内部表面が、酸素、水素、窒素、硫黄(いおう)、ハロゲンなどが炭素と結合した錯化合物を形成しているからである。ヤシ殻からつくった活性炭1グラムは0℃、1気圧の水素を2000ミリリットルも吸着する。吸着される分子は、まず活性炭の比較的大きな孔(あな)の通路を通って、吸着能のある2ナノメートル以下の多数の細孔の表面に捕捉(ほそく)されると考えられる。どのようなものを吸着するかによって細孔径の分布を調整する必要がある。すなわち色素のように大きな分子のものは大きな細孔を、ガスのように小さい分子には小さな細孔を多く有する活性炭が吸着効果が大きい。活性炭は物理的にも化学的にも安定で、耐酸、耐アルカリ性で、各種有機溶剤にも不溶である。

[真田雄三]

製法

工業的には木炭、木材、のこくず、ヤシ殻、パルプ廃液、リグニン、石炭類(亜炭、褐炭、瀝青炭(れきせいたん)、無煙炭)、泥炭(でいたん)、ピッチ、石油コークスセルロースなどを原料として製造する。製法は、原料を焼成、炭化賦活(ふかつ)、精製の順に行う。賦活とは10~100ナノメートルぐらいの孔隙(こうげき)中に含まれる炭化水素の酸化除去、内部炭素の選択的燃焼により、虫食い状に孔をあけて孔隙構造を発達させることをいう。製品の形状として粉末状と粒状とがある。賦活法にはガス賦活法と薬品賦活法とがある。ガス賦活法は木炭、瀝青炭、コークスを600℃程度で焼成、炭化し、ついで水蒸気、炭酸ガス、空気などを800~1000℃で流してやり賦活する。ガス賦活には原料をあらかじめ成形しておく必要がある。成形物がくっつき合うのを防止するのにアルミナ、塩化アルミナ、酸化銅を散布することがある。薬品賦活法は塩化亜鉛のほかマグネシウム、スズ、アルミニウム、カルシウムなどの塩化物、生石灰、硫酸、リン酸、二酸化硫黄などを作用させる方法で、このうち塩化亜鉛法がもっとも普及している。泥炭、木材などの脱水されやすい原料を粉末にして塩化亜鉛、リン酸などの濃厚な水溶液をしみ込ませ、乾燥し、500~700℃で焼成と賦活を同時に行い、原料中の炭水化物を水の形で取り除き、活性の高い炭素を得る方法である。

[真田雄三]

用途

粉末状活性炭は液相での使用が多く、油脂、ゴム、染料、砂糖、グルタミン酸工業で脱臭、脱色、精製用に用い、一般に使い捨てである。粒状活性炭は2~5ミリメートルの円筒形、球形のものと、4~100メッシュ(ふるい目の大きさ4.760~0.149ミリメートル)の破砕炭とがあり、粉状のものと同じ用途のほか、気相で溶剤回収、有毒ガス、粉塵(ふんじん)の除去に用いられる。浄水、家庭用や産業用の廃水処理、屎尿(しにょう)処理、排煙中の二酸化硫黄、酸化窒素などの除去など公害防止用には、吸着後再生使用する。このほか触媒担体、分子ふるいなど特殊な活性炭も製造されている。

[真田雄三]

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改訂新版 世界大百科事典 「活性炭」の意味・わかりやすい解説

活性炭 (かっせいたん)
activated carbon

特別に〈賦活〉と呼ばれる処理をして,内部に無数の小さい孔を発達させた炭素で,吸着剤としての能力が非常に高い。原料物質は木材,ヤシ殻,石炭(歴青炭,褐炭,亜炭),石油ピッチ等であり,一般に高温で炭化してから,水蒸気等により一部ガス化して微細孔を作り出す賦活法と,脱水・炭化を促進する薬品と混合して焼成後薬品を除く賦活法がある。このように製法,原料に差異はあるが,いずれも内部表面積は1000m2/gあるいはそれ以上に達し,表面構造は主としてグラファイト様の炭素骨格から成っていると考えられる。このため炭化水素,有機物など疎水性の物質を選択的に吸着する。気相での用途としては,溶剤回収,排煙の脱硫,臭気の除去(冷蔵庫の脱臭,靴底敷きなど),ガスマスク,触媒としての利用等がある。液相での用途は,砂糖の精製過程での脱色,化学調味料,薬品,油脂,酒類などの製造過程での精製・脱色があり,近年は環境汚染防止用の排水処理,水道水の異臭防止にも多用されるようになっている。また医薬用として,整腸,解毒の目的にも用いられる。

 特殊な吸着剤として,活性炭に類似した性質を示す骨炭がある。獣骨を乾留して生ずる,主成分としてリン酸カルシウムと10%程度の炭素を含む炭で,イオン交換と吸着の両方の効果により糖液の脱色・精製に有効である。
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化学辞典 第2版 「活性炭」の解説

活性炭
カッセイタン
active carbon, activated charcoal

比表面積が大きく,高い吸着能を示す炭素質物質.少量の水素,酸素,無機成分を含むほかは,グラファイト(黒鉛)状の平面結晶子が複雑に組み合わされた無定形炭素からなり,多孔質である.そのため,かさ密度は低く0.3 g cm-3 程度.平均細孔半径は1~2 nm,比表面積は800~1500 m2 g-1 である.木炭,やし殻,のこぎりくずなどの木質あるいは石炭などを原料として活性化(賦活)する.賦活法には,
(1)まず炭化したのち,1000 ℃ 程度の高温で水蒸気と反応させる方法(水蒸気賦活),
(2)原料に塩化亜鉛などの水溶液を含浸させてから,500~700 ℃ 程度に加熱焼成する方法(薬品賦活),
があるが,前者が大部分である.用途により形状が異なるが,粉末,粉末をタールなどの粘結剤により成形してから賦活した造粒炭,木炭,やし殻などの破砕炭がある.活性炭は疎水性吸着剤で水よりも油分を強く吸着させ,また電子受容体としてハロゲンを吸着させる.粉末炭は各種の液相脱色,脱臭精製に用いられ,造粒炭は溶剤回収などの気相吸着に用いられるほか,塩化ビニル,酢酸ビニル合成触媒の担体や,貴金属触媒の担体として用いられる.

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百科事典マイペディア 「活性炭」の意味・わかりやすい解説

活性炭【かっせいたん】

吸着力の強い炭素物質の総称。おがくず,木材,ヤシ殻,石炭(歴青炭,褐炭,亜炭),石油ピッチなどを塩化亜鉛やリン酸などの活性化剤で処理して炭化させるか,木炭を赤熱し,水蒸気で活性化してつくる。多孔質で表面積がきわめて大きく,形状は微粉末や粒状。物質の脱臭や脱色(砂糖の精製など),有機溶剤の回収,防毒面,ビニル工業用触媒の担体,家庭用の脱臭,浄水用,医薬用(整腸,解毒)などに広く利用される。
→関連項目骨炭脱臭脱色剤ニューカーボン木炭

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「活性炭」の意味・わかりやすい解説

活性炭
かっせいたん
active carbon

特別な処理により吸着力を強くした炭。木材,ヤシの実の殻,牛骨,血,褐炭,泥炭などを原料とし,炭化,活性化してつくる。木炭の3~7倍の表面積をもつ。脱臭剤,吸着剤,浄水,ガス精製に用いられる。原子力発電所では事故にそなえて活性炭フィルタを用意している。また通常時でも放射性キセノン放出量抑制のため活性炭吸着塔を備えている。

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栄養・生化学辞典 「活性炭」の解説

活性炭

 表面積の大きい多孔性炭素で,工場,家庭などで脱色,脱水,浄水などに広く用いられている.多くの物質を吸着しやすい形の炭素,いわゆる炭.動物の骨を炭化したり,木炭を高圧水蒸気や薬品で処理して作る.

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世界大百科事典(旧版)内の活性炭の言及

【炭】より

…爆跳する炭は不良で,ヌルデ,ハゼの炭に多い。そのほか,製鉄用,二硫化炭素用,活性炭用は自主規格をつくり取引されている。
[用途]
 木炭の一般用途は燃料で,炊事,暖房用に使用されるが,日本ではこの面での利用が激減している。…

【石炭】より

…なお,以上のような石炭の利用にあたっての環境対策とは別に,石炭は環境対策に貢献する一面もある。活性炭は吸着剤として用途が広いが,環境対策用として大量に使用するには木炭やヤシガラからの製造では足りず,石炭を原料とする活性炭(活性コークス)製造が実用化しようとしている。また,石炭が固体であり,そのままでもある程度の吸着性をもっているという特質を利用して,下廃水のろ過処理に使う方法も開発中である。…

【炭素】より


[製法・用途]
 工業的に各種炭素製品がつくられており,原料としては石炭,石油,天然ガス,天然黒鉛などが普通に用いられるが,目的に応じて合成高分子なども用いられる。無定形炭素としては,カーボンブラックと活性炭が最も多くつくられる。カーボンブラックは自動車のタイヤなどをはじめとして各種ゴムの充てん剤として多く用いられ,また印刷インキとして用いられるが,主として天然ガスあるいは石油の不完全燃焼によってつくられる。…

※「活性炭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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