難民認定制度(読み)なんみんにんていせいど

共同通信ニュース用語解説 「難民認定制度」の解説

難民認定制度

外国人から申請を受け、難民条約が定義する難民に該当するかどうかを判断する。条約人種宗教国籍、政治的意見、特定の社会的集団の構成員であることを理由に迫害の恐れがあり、国外に逃れた人を難民と定義し、出入国在留管理庁の調査官が面接などで審査する。認定されると「定住者」の在留資格付与。不認定の場合は審査請求ができる。日本では、制度が開始した1982年から2023年までに1420人を条約上の難民と認定。欧米と比べ少なく「難民鎖国」とも批判される。

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知恵蔵 「難民認定制度」の解説

難民認定制度

1951年に採択された国際条約「難民の地位に関する条約(難民条約)」に基づき、人種や宗教、国籍、政治的意見、または特定の社会的集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるか、迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた人を保護する制度。
日本では70年代後半、ベトナム戦争終結によって多くの難民が「ボート・ピープル」として日本へ流れ着いたことから受け入れの議論が高まり、日本政府は81年に難民条約に加入、翌82年に難民認定制度を整備した。難民の認定を受けた外国人は、就労できるほか、国民年金児童扶養手当、福祉手当などの社会保障制度で日本国民と同じ待遇を受けられる、永住許可が受けやすくなる、といった権利や利益を得られる。審査で不認定とされた場合は、不服申し立てや再申請をすることができる。
法務省の資料によると、日本では、2008年から17年までに、毎年6~57人を難民と認定しているが、16年に2万人以上の難民を受け入れた米国やフランスなどと比べると、難民認定者数は圧倒的に少ない。
また、10年3月以降、観光や留学などのビザで正規に日本へ入国した外国人が難民認定を申請した場合、申請の6カ月後から手続きが完了するまで、原則として、生活のために日本での就労が認められるようになった。これを受けて、アジア諸国などで「難民申請をすれば日本で働ける」といった誤った認識が広がったとみられ、ここ数年で申請者は急増、審査が長期化している。法務省が18年1月に発表した資料によると、1次審査で平均9.9カ月、不認定となった後の不服申し立て審査に平均23.4カ月かかっている。また、申請者の国籍は、フィリピンやベトナムなどが多く、世界で避難を余儀なくされている人が多いとされるシリアやコロンビアなどはわずかとなっている。
このため法務省は、本来保護しなければならない難民の認定を迅速に進めようと、18年1月から制度の運用を見直した。具体的には、初めて難民申請をした人を対象に、2カ月以内に書類審査で振り分け、難民の可能性が高い人には、6カ月を待たずに就労可能な在留資格を与える。一方で、申請理由が「本国で借金を返済せずに債権者から脅迫を受けた」など明らかに難民に該当しないなどの場合は、新たな在留資格を与えず、強制退去の手続きを進めることとした。実習先から逃げた技能実習生や退学した留学生については、在留期間を短縮し、就労を制限する。

(南 文枝 ライター/2018年)

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