面接という用語は英語のインタビューの訳語であるが,日本でインタビューといえば,主として新聞,雑誌,放送の記者が取材相手に会見することを意味する。しかし現在,面接といえば入学試験や入社試験の採用時の人物判定である面接試験の意味に用いられる場合が最も多い。本来,面接とは人と人とが直接顔を合わせてコミュニケーションをすることであるが,対話や会話と違うところは,面接には情報入手,治療または説得などの一定の目的があり,面接者と被面接者の立場が初めから決まっていて,両者の立場が役割交換をしない点である。たとえば面接試験では試験委員と受験者は終始立場が変わらない。取材インタビューでも取材者と被取材者の立場は固定している。
面接のやり方の理論や技術を面接法という。面接法は,法廷で裁判官や検事,弁護士などが,原告や被告,証人などと面接するとき,どうすれば公平で正確に行えるかという研究から始まったが,これを科学的な道具として組織的に用いる端緒を開いたのは,精神医学における治療の有力な手段として技術化した精神分析学派であった。その後,企業の内部で,生産性を高め職場の人間関係をよくするための方法として発達した。人事面接,昇進面接,指導面接,退職面接などがあり,前述の採用面接はこの系列の一つである。また各企業や軍隊において適材を適所に配置するための職業指導面接も盛んになり,職場に不適応を感じる人の救済のためにカウンセリングも発生した。そこから行政上の各種の相談面接やケースワークなどの社会的な面接も派生したが,カウンセリングは面接法の最も高度のものといわれる。これが心理的治療に応用されると臨床面接法と呼ばれる。また企業では顧客の購買心理をあやつるためのセールス面接も盛んに行われるようになった。一方,法廷面接の延長として非行者に対する矯正面接も進歩する。これとは別に,社会調査や世論調査においても,質問紙法とならんで面接調査法がとり入れられ,暗示や偏向の生まれない科学的面接法が研究された。
面接方法の基本的な分類には統制法と自由法がある。統制法は,面接者があらかじめ用意した質問項目により一問一答的に進めるもので,尋問法ともいう。自由法は面接者が質問の枠をはめないので,被面接者が自由に述べることができるから自由法と呼ばれる。一般的に後者の方が強制が加わらず,被面接者の思考の流れを分断することがないから優れている。したがってカウンセリングは非指示的方法として自由法を中心とする。時間を長くかけられない取材面接では,一問一答の統制法が主流になる。採用面接では前半に統制法,後半に自由法を用い,医療面接(問診)では前半に自由法で被面接者の訴えをきき,後半で専門的にききたい点を統制法で行う。面接は一人対一人を原則とするが,複数の面接者を同一場所に集めて自由に発言させる集団面接の方法もある。そのほか,1回で終わらない場合の再面接法,何回もくりかえすパネル面接,問題を一点に絞る焦点面接,被面接者の自我に迫る深層面接法などもある。
執筆者:堀川 直義
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