なにわ‐え なには‥【難波江・浪速江】
[一] 大阪湾、特に旧淀川河口付近の海の古称。淀川河口の付近では
入江が深く入りこみ、潟湖となって葦が繁茂していた。歌枕。
難波入江。難波の海。難波の浦。
難波潟。
※
拾遺(1005‐07頃か)雑下・五三七「なにはえの
あしのはなげのまじれるはつのくにがひのこまにやあるらん〈恵慶〉」
※千載(1187)恋三・八〇六「なには江の葦のかりねの一よゆゑ身をつくしてや恋ひわたるべき〈
皇嘉門院別当〉」
※
浄瑠璃・艷容女舞衣(三勝半七)(1772)下「一度にわっと涌出る。涙浪花江いづみ川」
[語誌]((一)について) (1)挙例の「
拾遺集」以後勅撰集にしばしば見られ、平安中期から
中世にかけてよく詠まれた歌枕といえる。その中で、挙例の「千載集」は、
百人一首に採られ、
後世の「
難波江」のイメージの一つを形作る。
(2)建保三年(
一二一五)一〇月二四日「名所百首」では夏の季節に分類されているが、もともと好んで詠まれた季節は春だった。ところが「津の国の難波の春は夢なれやあしの
枯葉に風渡るなり〈
西行〉」〔新古今‐冬〕などによって春から冬へ移行し、さらに「難波江の
草葉にすだく蛍をば葦間の舟のかがりとや見ん〈
藤原公実〉」〔
堀河百首‐夏〕あたりから夏の蛍がよく詠まれる
場所となる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報