日本大百科全書(ニッポニカ) 「雪の女王」の意味・わかりやすい解説
雪の女王
ゆきのじょおう
Snedronningen
アンデルセンの童話。1844年作。アンデルセン童話としては最長編の一つで、七つの小話からなる。一は序章で、悪魔がすべてのものをゆがめて映すへんな鏡をつくり、それで神や天使をからかおうとするが、手が震えて落としたため、何千万ものかけらになり、それが目や心臓に入った人間にはすべてがあべこべに見える。二以下は、そんな破片の一つを心臓に入れたカイ少年が、やたらに理屈っぽくて、幼なじみの娘ゲルダにもじゃけんになり、ついに雪の女王にさらわれて雪と氷の国へ連れていかれたのを、ゲルダがあらゆる困難を超えて訪ね当て、その愛情で救い出す話。理知を排して愛の力を高唱している点に作者の精神をみることができる。
[山室 静]
『山室静訳『アンデルセン童話集2』(角川文庫)』