雪靴(読み)ゆきぐつ(その他表記)snowshoes

改訂新版 世界大百科事典 「雪靴」の意味・わかりやすい解説

雪靴(沓) (ゆきぐつ)

雪中ではくわらぐつ。雪の少ない地方や雪国に近い地域で用いる言葉で,雪国では雪靴に種類が多く,この言葉自体用いられない。群馬県利根郡では狩猟に用いる皮ぐつに対して,短靴式のわらぐつを雪靴という。山梨県山梨市の旧牧丘町ではわら長靴や爪掛けのついたわらぐつを雪靴と呼び,冬の山仕事に近年まではいた。また岡山県や島根県山村でも,わらやガマ(蒲)の長靴を雪靴といい,冬の山仕事に用いている。なお,英語のスノー・シューズは雪靴ではなく,かんじきを指す。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「雪靴」の意味・わかりやすい解説

雪靴
ゆきぐつ
snowshoes

ユーラシア,北アメリカの極北地帯で広く用いられた雪上歩行具。かばの木を丸めて円形楕円形の枠をつくり,これに横木を渡してトナカイ革紐を編渡す。中央に足を載せて紐で縛る。起源は北アジアで,エスキモーの出現以前にすでにアメリカ大陸に伝わり極北部で特に発達,カリフォルニア北部にまで広まった。防寒を目的とする日本の雪靴とは形態,機能ともに異なり,むしろかんじきに近いものである。日本の雪靴はわらを編んでつくるもので,長靴型,短靴型の別があり,東北・北陸地方をはじめ中国,九州でも用いられたが,ゴム靴普及とともに次第に姿を消している。

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世界大百科事典(旧版)内の雪靴の言及

【雪】より

…雲の内部でつくられた氷の結晶が降るもの(降雪),またはそれが積もったもの(積雪)をいう。降る雪は古くから花にたとえられ,雪華,六華(花)ともいわれる。雪の語源にはユキヨシ(斎潔),ユキヨ(斎清。いみきよめるとの意味)などから,〈やすく消える〉との意味から,あるいは神の〈御幸(みゆき)〉(神の降臨の意味)からきたなどとする諸説がある。いずれにせよ,古来日本文化の中心であった大和地方や京都では,雪の舞い下りるさまや,純白で積もってもすぐはかなく消える雪を風雅なものととらえ,月や花とともに雪を風流の代表にあげていた。…

【わらぐつ(藁沓∥藁靴)】より

…雪中で用いるわらで編んだくつ。雪ぐつともいい,爪掛つきのワラグツ,短ぐつ式のジンベイやゲンベイ,長ぐつ式のフカグツなどがある。ワラグツやゲンベイは浅い雪のときの歩行用に,ジンベイは脛巾(はばき)を脛に当てて雪中の労働に,フカグツは屋根の雪降ろしや雪踏みにかんじきとともに用いられた。…

※「雪靴」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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