雪中で用いるわらで編んだくつ。雪ぐつともいい,爪掛つきのワラグツ,短ぐつ式のジンベイやゲンベイ,長ぐつ式のフカグツなどがある。ワラグツやゲンベイは浅い雪のときの歩行用に,ジンベイは脛巾(はばき)を脛に当てて雪中の労働に,フカグツは屋根の雪降ろしや雪踏みにかんじきとともに用いられた。中国北部にもわらぐつはあるが,日本のほうが種類が多い。草履やわらじ(草鞋)の編み方を基本にして爪掛,踵掛(あくとかけ)(当),脛巾などを足して各種のわらぐつがつくられた。わらぐつの内に,鼻緒(前緒)があり,これに指股をはさんで用いるのは,南方稲作民に共通な鼻緒式はきものをはく習俗のなごりである。平安末期に草履や草鞋(わらぐつ)が完成して以後,雪国でわらぐつがつくられるようになった。この時代,公家の伴人がわらぐつを用いたとあるのはわらじのことであり,《雅亮装束抄》によれば,上皇が雪見に用いたのは藁深沓(わらふかぐつ)であった。
執筆者:潮田 鉄雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
被甲履き物類の一種で、広義には足をのせる台部に、足の甲を覆う被甲部を造作した藁製履き物を総称し、狭義にはスリッパ型の藁製履き物をいう。藁沓類は一名ユキグツともよばれ、東北地方では長く積雪期の履き物として使用されてきたが、また、その分布は希薄ながら他の地方にも認められるので、かつては広く日本全土にわたって分布していたことが推測される。藁沓類は、その台部、被甲部、かかと部の有無、着用装置の差異などから、〔1〕爪掛草鞋(つまかけわらじ)類、〔2〕藁沓類、〔3〕浅沓(あさぐつ)類、〔4〕深沓(ふかぐつ)類の4種に分類される。狭義の藁沓類は、このうち第二類の藁製スリッパ型のもので、着脱が簡便なので積雪期に農家の土間・台所など屋内とか近所への歩行に使用された。
[宮本瑞夫]
…半靴(ほうか)は靴を簡略にしたもので,靴先をとがらせ,靴帯(かたい)を省き,平安時代から武士が乗馬に用いた。鞋には,錦鞋(きんかい),挿鞋(そうかい),糸鞋(しかい),草鞋(わらぐつ)がある。牛皮底の紫色綾布のくつは挿鞋といい天皇や皇后が上ばきに,表を錦,内側を絹布で張った錦鞋は女官が,糸を編んだ糸鞋は幼帝や皇太子,舞楽の舞人が用いた。…
…革またはゴムなどで作ったひざのあたりまで届く深い靴。古くから日本では,黒革製で筒が長く,雨天のときに公家が履いた深沓(ふかぐつ)や,積雪量の多い地方を中心に広く用いられたわらぐつ(藁沓)などがあったが,近代的な長靴は明治初年に乗馬用の革製のものが作られ,軍人や警察官が使ったのが最初で〈ちょうか〉と呼ばれた。ゴム製の長靴は,1905年にアメリカから輸入されたのが最初で,3年後の08年に東京の三田土ゴム合名会社が輸入品に刺激されて試作したが,これはまったくの試作に終わった。…
…雪中ではくわらぐつ。雪の少ない地方や雪国に近い地域で用いる言葉で,雪国では雪靴に種類が多く,この言葉自体用いられない。…
※「藁沓」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
〘 名詞 〙 年の暮れに、その年の仕事を終えること。また、その日。《 季語・冬 》[初出の実例]「けふは大晦日(つごもり)一年中の仕事納(オサ)め」(出典:浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)油...
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